されど油断は
「アッハハハ!バッカだなぁ、巽は!」
「いやいや、ちょっと待て!バカって、俺が!?」
「そりゃそーだろ!なぁ、栞!?」
「そうね。ちょっと、女子への配慮が足らないかなぁ。ねぇ、梓?」
「わたしもそう思う。わたしだったら、皆の前で男の人がそんなこと力説してたら、すっごく恥ずかしいもん」
「……マジか!?」
「ってか、もう浜から出るから、凌はシャツか何か着ろよ」
「あ?何だよ颯。暑いんだから、別に良いだろ?男は上なんか着なくても……」
「とか言って、何気にシックスパックアピールしてるだけだろ?凌の場合!」
「あ?何だって?」
「別にー」
「巽、お前、仕返しのつもりだったんだろーけど、仕返しどころか墓穴掘っただけだぞ?」
「なに!?」
「だって、お前は海パンにちょい肉乗ってたからな!」
「だぁーっ!そーゆー颯だって似たよーなモンだろ!?」
「いや、俺は凌ほどバリバリには割れてないけど、巽ほど肉が余ったりもしてない」
「うわ!コイツ、細マッチョアピールかよ!そんなの流行ったのもう昔だろ!?なぁ、栞、梓?」
「えっ?……で、でも、三人ともスタイル良いと思うよ?」
「梓!巽は甘やかしちゃダメ!コイツはすぐ調子にのるんだから!」
「そうだぜ!コイツ、この前のストリートのスリーオンスリーで、すぐにバテやがってよー!お陰で俺ら惨敗だよ!」
「あ!?負けたのは俺のせいじゃねーだろ!?だいたい相手にリードされたら、無理やり入りもしねースリーポイントばっか狙って、相手にリバウンド取られまくってるヤツが居たのが敗因だろ!」
「お!?テメーそれぁ俺の事か!?」
「あー、颯はちゃんと大事にパス回したりしてたからなぁ!オメーくれーしか居ねーよなぁ!?」
「ほー、巽!言ったなぁ!?」
「おいおい!!ヤメヤメ!!お前らケンカとかしてんじゃねーよ!」
「「ああ!?良い子ちゃんぶってんじゃねーぞ!!颯!!」」
「あのねぇ!!ホントにやめてくれる!?アンタら騒がしくて周りに迷惑だから!」
「「「……は、はい……」」」
「……てか、クレープ食べても良い?」
「あ!梓!あたしも!半分こにしよ!?」
「うん、良いよ。ストロベリーで良い?」
「チーズも欲しい!」
「わかった!」
「おお!いつの間にか商店街に来てた!?」
「お前らがケンカしてる間に、海沿いの道路なんかとっくに渡ってるよ」
「あれは巽が……!」
「凌は、いーから早くシャツ着ろ!」
「……あ、ああ、解ったよ」
「俺、ブルーベリーカスタードクリーム!」
「巽、お前、更に太るぞ?」
「あ!颯、お前、それはハッキリ言っちゃいけねーヤツだろ!」
「あーもう!巽は誰彼構わずケンカすんな!」
「ハハハ!栞も苦労してんなぁ?」
「ホントよ!あたしも好きでコイツと幼馴染みになったワケじゃないからねー」
「そりゃー俺のセリフだろ!?」
「「「巽は黙れ」」」
「……はい……」
「梓はストロベリー?」
「……うん。ストロベリーチーズケーキ」
「じゃあ、俺はチョコチーズケーキにしよう」
「「「おい!颯!梓とそこで二人の世界を作ってんじゃねーよ!」」」
「あ?いや、別に俺はそんなつもりは……」
「梓は颯なんかにはあげないから!」
「おいおい栞。俺と梓の間に入ってまで阻害しなくても良いだろ」
「いいや、颯は手が早いからなぁ。純粋な梓に近づくなよな」
「はい。巽は一人で帰るってさー」
「えっ!?いや、颯!?ちょっと待て!駅までも結構あるし、お前の車じゃなきゃ……」
「おー!じゃあ帰りはゆったり座れるなぁ!」
「四人だからねー」
「おいおい!……マジ!?」
「クックック!今日は俺の機嫌を損ねたら歩いて帰ってもらう事になるぜ!?お前ら、解ったか!?」
「解ったから、とりあえずクレープちゃっちゃと食って、夜飯食いに行こうぜ?」
「そうね。さすがにあれだけ泳いだら、クレープくらいじゃ足らないわ。何か美味しいもの食べたいなぁ」
「わたしも、お腹ペコペコだから、まだ食べれそう」
「なっ!?俺の話を流しやがったな!?……くそぅ!お前ら全員置いて帰ってやる!」
「お前、そんな事したら、俺達四人、お前と縁切るぜ!?」
「ああっ!それは無いだろ!それシャレにならんよ、凌君!」
「プッ!クスクス……」
「アハハハ!ホントに、アンタら面白いよね!」
「だろ?」
「俺達最高!」
「俺達五人は、切っても切れない仲間だ」
「もはや親友だ」
「だな」
「ああ」
「ええ」
「うん」
「……ちとくさいけど、そんな俺らに乾杯だぜ」
「良いねー」
「ホントくせぇな」
「クレープで?」
「何でも良いでしょ」
「……じゃあ、いくか!?」
「あ、待って、私、栞に半分食べて渡しちゃったから、私のクレープが……」
「二人で半分こしたんだから、梓も一緒にこれ持とう?」
「女子二人は仲良いな。俺達もやる?」
「巽、キモイ」
「じゃあ、皆持ったな?いくぞ?せーのっ!!」
「「「「「ウィーーッ!!」」」」」
――――――
「―――丁度、夕日が海に沈むぞ」
「お腹も減ったけど、もうちょっと眺めていても良いかも」
「キレイ……」
「本当に、この五人は最高だわ」
「たりめーだろ」
「……さて、飯食って帰るぞ?車に乗れ」
「「「「ウィー!」」」」
「乗ったか?」
「ああ、全員乗った!」
「じゃあ、シートベルトをちゃんと締めろ」
「「「「ウィー!」」」」
「……じゃ、出発するぞー」
「颯、運転代わろうか?」
「バカ言ってんな。栞は免許ねーだろ」
「免許無くても運転はできるぜ?」
「凌は今、正に自動車学校通ってるからねー」
「仮免もこの前取ったし」
「じゃあ、学科で習っただろ。熟練者の同乗がなきゃ公道で運転しちゃダメだって」
「ホントに仮免持ってんのか?」
「解ってるよ。冗談に決まってんだろ」
「巽は取りに行かないの?」
「俺、バイク派。誕生日は12月だから、冬休みに試験受けに行くって手もあるけど」
「めっちゃ混んでる時期じゃん」
「バイクの時、冬休み初日の26日に試験場に行ったけど、めっちゃ混んでて、スゲー並んだ覚えがある」
「まーそーなるわな」
「……てかお前ら、何食うか決まったのか?」
「……おー、忘れてた!」
「あ!アメリカンバーガーは!?」
「海来てバーガーはねーわ」
「てかもう過ぎた」
「遅かったか……」
「つーか、バーガーはねーって」
「アメバはビッグサイズで美味しいよね!」
「だから、バーガーはねーって言って……」
「あっ!ソコの浜焼きは!?」
「えっ!?あ!あれ!?」
「遅ぇーよ!」
「でも、美味しそう!」
「マジだ!」
「なにっ!?どこ!?」
「いや、今過ぎた!!」
「えっ!?マジ!?」
「あっ!!颯!前、前っ!!」
「「「「えっ!!?」」」」
「キャーーッ!!」「ウオーーッ!!」
「やべぇーーッ!!」「ぶつかるーーッ!!」
「「「「――――――――――――ッッッ!!!!!??」」」」
「「「「「………………」」」」」
「「「「「…………」」」」」
「「「「「……」」」」」