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プロローグ
あの声を聴く度に「ああ、これは夢なんだ」と理解する。夢の中にありがちな支離滅裂さで、前後に脈絡のないぶつ切りシーンを継ぎ接ぎして映像化の上映だ。
どんなシーンでも、どんな雰囲気からでも、最後は決まってあの声だ。そしてその声を合図に俺は目が覚める。明晰夢、なんてものが本当に可能ならば、俺はその声の主を知りたい。そう思い続けて十年。あの空白の夏からは長い年月が経ち、今年で二十八回目を迎える。
ぼかしフィルターで濁された背景に、顔がハッキリとしない女性の姿。口元がかすかに動く映像には、一切の音が伴わない。オーディオ機能が壊れてしまったパソコンみたいで、俺はもどかしくてそのぼんやりとした顔をはっきりと捉えようとあがく。
何度も何度も試みたことだ。そして今回も結果は変わらない。その女性の表情は、最後まで見えない。
――――さようなら。
意識はそこで浮上する。