第81話
「さーてと、泥棒さん。盗んだものを返してもらおうか」
悶絶している黒装束を後手にして拘束。
取り敢えずボディーチェックしておくか。胸元が膨らんでるからここに仕舞い込んでるんだな?
ほら、返せよ。
あれ?
柔らかい!?
アダマンタイトは硬いはず……
おかしいな。めんどくさい、ちょっと強引に脱がすか。
ぽろん!?
え?
ちょっと待って。
こいつ女だったのかーー!
「ゲンスイさん何してるのかしら?」
ビクッ!
突然後ろから声かけないでくださいよサラさん。ビックリするじゃないですか……
「いや……物騒な物持ってたら厄介だから武装解除しておこうと……」
「私にはそうは見えないのはなんでかしらね」
「こっちのヤツは持って無さそうだったんだが、そっちはどうだ?」
俺のエアーリーディングスキルが発動してこのままではよろしくないと判断。強引に話題を変える!
秒で露出してしまった胸部に黒装束の一部を押し付けて隠しておくのを忘れない気遣いはさすが俺としか言いようがない。
「持ってないわ」
会話とは別にすごぉ~く睨んでませんか?
ええー、押し切る!
「こっちもなさそうだ。ハズレだったか?」
「収納庫持ちかもしれないわよ」
「そっか。だったら面倒だけど自白してもらうしかないな。拘束したし、たたき起こそうか」
「そうね……っ! 危ないっ!」
「え? グゲッ」
突然サラに突き倒されて顔から地面に突っ込んでしまった。
痛む顔を上げて周囲を見ると、さっき拘束したはずの黒装束の胸にナイフが突き刺さっていた。
射線から見て、サラが突き飛ばしてくれなかったら俺に刺さっていた……
ナイフが刺さった部分から血が垂れている。心臓を一突き、これは即死だな。
「ありがとう、助かった」
「それより警戒を」
「ああ」
油断、していた訳じゃないんだけどな。射線方向をうかがっても匂いがしない。くそっ、匂い対策してやがるのか。
「ゲンスイさん、もう一人の賊を守って!」
それだけ言うとサラはどこにいるか分からないナイフを投げたヤツを探しに飛び出していった。
口封じに賊が賊を始末しようとしている……?
だとしたらサラの言う通りもう一人の捕らえた賊は生かしておかないと盗まれたアダマンタイトも情報も永遠に消え去ってしまう。
さくっともう一人の賊の前に移動すると、正面に土壁で防御壁を生成。すでに手足はサラが拘束してくれていたが逃げられても困るのですぐ近くの木に縛り付けておく。
さて、曲者はどこだ?
くそっ!
匂いの無い相手がこんなに厄介だと思わなかった。
この世界に転生してからというもの、嗅覚が異常に効くのでそれを当てにして動くのが当たり前になっていた。
それが突然通用しなくなると一気に緊張感が増す。
見える範囲にはいない……と思うが。
両手に魔力を集め水球を作り出しいつでも投げれる体制を確保する。
ん?
今不自然に木の葉が揺れたか。
ちょうどあっちは風下、匂いは頼りにならないが五感を使って気配を探る。
二人……いや三人か?
飛び出してきた瞬間を狙ってやるさっ!!
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