第78話
翌朝俺達は再び長と合う事になった。
その時にアダマンタイトの精製をさびれた武器屋のおっちゃんと約束していたことを話した。
「アジカナとそんな約束をしておったのか。恩人の頼みじゃ、もちろん構わんよ。アジカナよ、高圧縮炉棟の使用を許可しよう」
っていう感じであっさり許可してもらったのだ。
さびれた武器屋のおっちゃん、アジカナっていうんだな。そういえばずっとおっちゃんとしか呼んでなかったし認識してなかった。
そして隣にあった煙突のある建物へと案内されてアダマンタイトを全部渡して精製をお願いした。
俺達が次々と収納庫からレア素材であるアダマンタイトを出すものだから、開いた口が塞がらなくなっているおっちゃんを見るのは面白かったぜ。
その後やっと宿に戻った訳なんだけど。
「お嬢さっ・・・ヤマト殿! ご無事で何よりです!!」
半泣きでヤマトに飛びついていたヴァングルは、本気で心配していたようだ。まぁ予定より長引いた上に長のところに泊めて貰ったりしたから心配するよな。
「さて」
と一息ついたタイミングで切り出した。
「アダマンタイトの精製に3日はかかるって言ってわよね。その間どーする?」
「ちょっと装備のメンテナンスしたいな。サラも如意棒があれだし……」
というと、ちょっと眉をしかめた表情になった。
やっぱり愛用している武器が折れたのはショックだったのだろう。
「そうだけど、せっかくだからアダマンタイトを使って作り直したいから後回しね」
「そっか、そうだよな。俺もパイルバンカー使いすぎたせいか強度が落ちたんだよな。アダマンタイトで作り直そうかな」
「となると~、とりあえずは通常のメンテナンス程度しかできないわね~」
なんだかんだ言って俺達は冒険者である前に研究者で製作者だからそういうメンテナンスは当然お手の物。
という事で今日は大人しくメンテナンスの日となった。
ヴァングルは甲斐甲斐しくヤマトを世話する一方、食事なんかはちゃんと俺達の分まで作ってくれたりしていた。
こいつ、思ったよりもイイヤツかもしれない。
今後の旅に必要そうなものはすでに買い出ししてきているらしいが、思ったよりも長く滞在することになり食材やらなにやらちょくちょく買い出しに行っていた。
作った料理をよそったりするのはヤマトの分と自分のだけで、あとは好きにしろって投げやりな感じだったり、先によそうのをいい事にヤマトの所へは具沢山だったり、人様と同じものを食べれることに感謝しろとか言ったり……
あれ?
やっぱりイヤなヤツかも。
「ヤマトー、魔導繊維の基本的な理論構造は分かったけど俺の強化腕との相性を考えてシールド状になるようなのを考えてみてるんだ。それでこの部分なんだけど……」
「おい犬コロ! ヤマト殿に近づきすぎだ。離れろ」
もう、いちいち邪魔すんじゃねーよ。
「ゲンスイさん、魔力筋の基本的な理論構造はこれでいいんですよね?」
「どれどれ」
と言ってヤマトが俺に近づいた時は、何も言われなかった。
あいつはたぶん気分屋なんだ。
めんどくさいヤツ。
サラとシェリーさんはメンテナンスに必要なものを探してくるとか言って二人だけで出かけてしまったし。
あー、もう。
ヴァングルの事は気にしないようにしよう。
そんな一日。
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