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第77話

 たくさんある横穴から一つを選び進む。上り下りを繰り返しながらだったけど一切の魔物が出なかったので本当にただの遠足みたいな感じだった。

 遠足と違ったのは答えが分からない道のりって事だ。


 それでも横穴を入って行き止まりや垂直すぎる角度の為引き返すこと2回。


 ようやく3回目にして坑道へとつながる道を引き当てったのだった。



「見て!外の光よ!」

 ゆっくりカーブする道の先から光が見えて来た。


「すっかり暗くなってる」

 外からの光は月の明かりだったらしい。


「様子見だったはずなのに~すごい時間かかったものね~」

 あれ?

 様子見だったっけ?

 まぁいいか。



「どうだっていいじゃないか、こうしてやっと出れたんだ」


 その言葉通り、俺達はやっと外に出ることが出来た。

 そしてそこには思いもよらぬ人が待っていた。




「おいにーちゃん、無事だったか!」


「あれ?おっちゃんは確か……さびれた武器屋の?」


 坑道の入り口にいたのは数人のドワーフだった。その中でも見覚えのあるおっちゃんがいたのだ。



「さびれたは余計だバカヤロウ」

 だって、俺が店にいる間誰一人客こなかったじゃん。店も大通りから外れてたし。


「なんでここに?」


「なんでってそりゃ、にーちゃんがロックイーターを討伐するって人の話も聞かずに飛び出して行っちまったからだろーが。そのまま死なれでもしたら夢見が悪いってもんだ。だからこうやって救助隊を編成してだな……」


「失礼、初めまして。私はこのゲンスイさんと同じパーティーのサラと言います」


「お、初めまして。なんだにーちゃんの仲間はまともなんだな」


 おい、後半俺に向けて言ってるだろ。


 続けてシェリーさんとヤマトも初対面の挨拶を済ました。


「それで先ほど、ゲンスイさんが話も聞かずに飛び出したと言われました?」


 サラちゃん、なんで俺を会話に入れないように物理的に俺とおっちゃんの間に割ってはいってるんでしょうか?



「ん? ああ、鉱山に出現するロックイーターは並じゃないって話をする前に飛び出して行っちまったんだ」


「そうですか、分かりました」


 それだけ言うとサラは笑顔を俺に向けて下がっていった。

 こんなサラの笑顔……いやだ!


「ゲンスイ裁判かしらね」


 すれ違いざまに何か聞こえた、気がしたが考えてはダメだ。



「それよりもその様子だとロックイーターには出くわさずに帰ってこれたみたいだな。安心したぜ」

 聞きたくない考えたくない事から積極的に逃亡しようとしていた俺におっちゃんが話を振ってくれたので全力で飛び乗ろう!



「ちゃんと倒してきたぜ」


「え?」

 おっちゃん以外のドワーフさん達もなんかザワザワしてる。


「だから、ちゃんと倒したって。なぁ!」


 俺だけの言葉じゃ信用ならんならばと、皆に声を掛ける。


「本当ですよ」

 俺の言葉を受けて三人とも頷いてくれている。


「だって……なぁ」

 おっちゃんが同行している他ドワーフに投げかける。まぁ結構強敵だったし信じてもらえないか。だったら証拠をみせればいいか?



「ロックイーター倒した証拠に解体したの見る?」


 俺は収納庫(インベントリ)からデカイーターの一部を出して見せた。



「おお! 本当に倒してる!!」

 おっちゃん達が一斉に素材を確認すると感嘆の声を上げた。


「これらの素材買取っておっちゃんとこで出来る?」





「……え、ああ、うん、お?」


 え、どっちだよ。

 反応を確認するためおっちゃんを凝視してみる。




「あ、ああ。そうだな。それよりも、ちょっとこれから付いて来てくれ。(おさ)に報告だ!」



 俺達の選択肢はないように、そのままおっちゃんの言う通り里へと戻る事になった。


「サラちゃん~、ちょっと~」


 シェリーさんがサラに何か内緒話でもあるのか、帰り道二人だけ少し離れて小声で何か話していたがきっと俺には関係無い事だろう。そうに違いない。裁判がどうとか関係ないはずだ。急に女子会をしたくなっただけだ、きっと。たぶん。






 俺達が案内されたのは、大きな煙突が付いている建物のすぐ横でこの里では比較的立派な建物だった。

 そして(おさ)と呼ばれる結構歳のいってそうなご老人を前に討伐した経緯なんかを説明。

 デカイーターを倒したのはもちろん、他のうじゃうじゃいたヤツラについては里では把握していなかったらしくそっちについても感謝された。


 そして俺達の話が一通り終わると、今日はもう遅いの部屋を用意してくれたらしい。


 なんだかんだ疲れていた俺達はそのままお世話になることにした。



 そういえば宿にアイツを残したままだったなーと気付いたのは、翌朝の事だった。


 

 ドンマイッ!


最後まで読んで頂きありがとうございます

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