第75話
水魔法で水を作り出し頭からかぶると腰を下ろした。
「なんにせよ、疲れたな~」
「ゲンスイさんは少し休んでて。動けなかった分、解体は私達がするわ」
デカイーターの解体を買って出てくれたのでサラとヤマトに任せて、最下層部分に多少くすぶっている火はあるものの静かな地下空間で休憩していた。
ぼーっと地下空間を見ていると、ところどころ地面がキラキラっと光っているように見えた。鉱山だけあって何かの鉱石かもしれない。
ただ、疲労から深く考えるのをやめた。
解体するのも大変そうだったので、少し休憩をしたあと俺も手伝った。
撤収するとなると、俺達が落ちて来た所以外の横穴から坑道に繋がっている道をさがさなければならい。だから撤収前に皆で食事をして、その食休みをしていた。
「すっかりくすぶっていた火も無くなったな」
「そうね~」
「僕ちょっと見てきます!」
「転んだりしないよう気を付けるのよ~」
すでに駆け出していたヤマトは手をあげるだけの返事をしていたが、聞いて無さそうだな。こうしてみるとただのやんちゃそうな少年なのに。
「しかしサラの上級魔法ってすごいんだな」
あの威力を想い出すと軽く震えがくるぜ。
「改めて言われると照れるわね」
という割には照れてなさそうなサラだ。
「確か~、サラちゃんって~一般的なエルフと同等の魔法が使えるって聞いてたけど~」
「そういやそうだ。ということはエルフは皆、こんな火力を持ってるのか?」
「うーん、実はね。あの魔法って上級ではあるんだけど……本来は数人で使う魔法なのよ」
「そうなの!?」
「たぶん一人で術式を起動して威力を安定させるのは難しいんじゃないかしら」
「でも~、だったらなんでサラちゃんにはできたの~?」
当然の疑問だ。
「私ほら、研究者だから」
……なるほど、分からん。
「簡単に言うと、マルチタスクが可能って感じかしら」
「複数の事を同時進行できるって事かしら~?」
「まぁ簡単に言うとそうね。そしてそれって転生前の研究者をしていた時に身に付けたものなのよ」
「でも、この世界のエルフだって出来そうじゃない?」
「エルフって寿命が長いからかしら、気が長い性質なのよね。だから複数を同時処理しようって考える人なんていないんじゃないかしら?」
「なるほどな。じゃあ俺も頑張れば出来るかな?」
「ゲンスイさんは初級魔法しか使えないでしょ」
「例えばさ、右手から火魔法で左手から氷魔法って感じでさ」
そしてそれができたらその両手のエネルギーをスパークさせてみたりとか?
「そのくらいなら訓練次第で出来るかもしれないわね。こんな感じかしら?」
サラはあっさりと右手に炎、左手に氷属性の魔法を起動していた。
おお!
ロマン魔法への希望の扉が今開かれた!!
さっそく右手で火魔法を発動。
……しつつ左手で、ってあれ?
氷魔法って中級じゃね?
……俺、できなくね?
ちくしょう。
「ゲンスイさんいきなり泣き出してどうしたの!?」
「泣いてなんかないよ。ただ、ちょっと煙が目に染みただけさ」
「そう、ならそう言う事にしておくけど。それにもうあの魔法は使わない事にするわ。起動に時間がかかりすぎるから使える場面が限られてくるっていうのもあるけど、威力調整ができそうにないわ」
「あの威力は想定範囲外だったわけ~?」
「そうよ。それに思ったよりもたくさん魔力を持って行かれたしね。やっぱり私はこっちの方が性に合っているわ」
そういって片足を上げて強化靴を強調してくる。
だからサラさん、そのポーズはいろいろ見えちゃいけないところが見え……見え……見えないけど、鉄壁ミニスカートのせいで見えないけど!
でもそれはそれでパンチラリズムと絶対領域の強烈コンボが俺の純情に満塁ホームランなわけで……
「みんな~! ちょっと来て~~!」
突然遠くから声がした。3人そろって声の方へ振り向くと、最下層部分まで降りて行っていたヤマトが俺達を呼んでいる。
「なんだろ」
「行ってみましょ」
「そうね~」
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