第74話
突進してくるデカイーターが衝突する寸前、思いっきり横っ飛びして回避。着地と同時にデカイーターの側面に向って拳を大きく振りかぶりながら叩きつける!
相変わらずダメージが通ったか通ってないのか分からない感触だ。
が!
「パァアアアイルバンカァアアアーー!!」
殴りつけた部分への衝撃に追加して、右の強化腕に内蔵装備された鉄杭が音速を超える速度で発射される。
グニュリ
という感触が一番近いだろうか。
パイルバンカーはデカイーターの表面を突き破りその体内へと刺さった。
すぐに抜いてデカイーターを足場に距離を取る。
「やったか!?」
「ゲンスイ君~、それフラグだと思うの~」
緊張感を一発で破壊する気の抜けたツッコミは意識的に無視しておく。
知ってるさ。これ一発で倒せるとは思えないもんな。サイズ的に。
ダメージが通って暴れまわるデカイーターが距離をとったかと思うと、怒りの感情をあらわにまたしても突進してくる。
怒りでついさっきの事を忘れたのか、それとも知能らしい知能がない魔物だからかまたも大口を開けて向かってるのはもはや愚かとしか言えないよな。
タタン、タタン、タタンとシェリーさんの援護射撃がどんどん口内に突き刺さる。
俺は射出されたパイルバンカーをセッティングし直すと腰を落として魔力を拳に集める。
そして再び衝突直前で回避、攻撃からのパイルバンカー追撃だ。
あとは、同じことを繰り返すだけでデカイーターを倒すことができた。
苦労したのは繰り返す回数が多かった事と、暑さ対策で水魔法を使って凌ぐのを繰り返して疲れたって事くらいか。
「おつかれさま~」
「シェリーさんも。援護ありがとう」
倒した後にシェリーさんとハイタッチを交わした。
「ごめんなさい、私全然役に立たなかったわね」
サラがデカイーター戦ではMP切れ直後で戦闘復帰できたのは最後のほうだけだったわけだが、戦果の無さに落ち込んでいる様子だな。
「サラのおかげでうじゃうじゃいたロックイーターを一網打尽に出来たんだ。十分な戦果だよ」
「うん……」
事実、うじゃうじゃいたロックイーターと戦いながらあのデカイーターが襲ってきたら結構やばかったかもしれないのだ。そういう意味では結果オーライと思っていいと思うんだ。
「それに、ヤマトも魔法助かったぜ」
「ちょっと言いにくいんだけど……バフ魔法は効果時間短いからとっくに切れてたと思うよ」
あれ?
そうなの?
なんかいつもより力が出たような気がしたんだけど?
「フラシーボ効果じゃないかしら~。単純な人程効果が出やすいっていうし~」
ふら?
なんだって?
「って誰が単純じゃい!」
「あははははっ」
「ゲンスイさん脳筋だもんね」
皆して笑いやがって。
違うやい!頭脳派ですもん!
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