第72話
MPを使い果たして疲れたサラを座らせて事の成り行きを見守る。
下にいたロックイーターが普通のヤツならオーバーキルも甚だしいはずだ。
しばらくすると酸素不足か炎は形を潜めてきたので水壁越しではあるが視界が開けて来た。
「予想通り、これはオーバーキルだ」
「間違いなさそうね~」
地下空間下を凝視するが、黒焦げの塊が見えたが全く動く様子もない。
「それにしても、水壁越しでもすごい熱気だな」
俺達がいる横穴でも気温がどんどん上がってる気がする
「これってもしかして~」
「どうした?」
「あまりよろしくないというか~」
何かに気付いたのかシェリーさんがそわそわしている。
一体何が……
と、考えようとした時
後方から魔物独特の叫び声が聞こえて来た。
「地下空間の熱気が他の横穴を伝って後方から来た……?」
「そして~あのデカいロックイーターもきちゃったわね~」
これだけの熱気だ。ロックイーターに火魔法が有効ならば多少なりともダメージが入っているはずだ。そんな状態なら熱の無い方に逃げればいいものをこっちにやってくる。
それはつまり俺達を獲物ではなく敵と認識してるって事じゃないだろうか。
とはいえ、こちらの状態は……
サラはMP切れでダウン。ヤマトは地下空間の熱気を防ぐため水壁で動けないと。
俺とシェリーさんで食い止めるしかないってか。
――上等!
俺は両手に魔力を集めつつ歩き出す。
もちろん魔力は火魔法の為だ。
横穴の奥が動いているのが見て取れた。もうあいつは土の中じゃなくこの横穴を通路として移動してきているのだろう。
距離が縮まるにつれ、やつの巨体が見え始める。
まだだ。
もう少し。
よし、射程に入った。
「これでもくらいやがれーーっ!」
手に集まった炎の塊をヤツの大口の中に投げ込んでやった。
すぐ後ろから魔法火矢が飛んでいく。それを意識しつつも再度手に魔力を集める。
タタン、タタン、タタンと飛んでいくシェリーさんのツインアルテミスボウの攻撃。
あれって2連ボウガンのはずだけど?
速射性やばくいないですか?
多少なりともダメージが入ったようで、デカいロックイーターの進行速度が落ちたぞ。
だったらこのままもう一発だ。
「俺の投球は250キロ以上だぜ! くらえーー!」
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