第69話
どのくらい落下しただろうか
縦穴は徐々に斜めになり横になっていた。
そのおかげで転落死することなく途中から滑り台状態だった訳だが、スリルはそれの比じゃない。着地出来たのはよかったのだが……。
「みんな無事?」
「俺は大丈夫だ。かすり傷だけで済んだ」
「私も同じよ~」
「僕は大丈夫です」
とりあえず皆無事だったようだ。見るとサラもシェリーさんもかすり傷だけで済んだようだ。ヤマトだけは無傷だった。
その要因となったのは例の服のようだ。落下中の衝撃を吸収するためエアバックのように膨らんでいたのだ。ちょっとうらやましい。
「結構落ちたよな」
「登るのは……ちょっと無理そうね」
落ちて来た方向を見るが……
結構な距離落ちたような気がするからなぁ。
逆を見ると幸いなことに、この横穴はまだ途切れることなく続いていた。
「選択肢はないってことね~」
「それにしても……」
俺の視線がサラの手元で止まる。
それに気付いたサラが笑顔を見せてくれるが。
「大丈夫よ、私にはこれがあるから」
そういいながら片足を上げて強化靴を強調してくるサラさん。ですからそのポーズはなにかと私のツボを押さえすぎてましてけしからんぞもっとやれ~!
ハッ!
いや落ち着け俺。
大事なのはそこじゃない。いやそれも俺にとっては大事なんだけど。じゃなくて。
サラが持っていた如意棒がポッキリと折れてしまっているのだ。
「如意棒ってアイアンゴーレムから採取した鉱石とミスリルの合金だったか?」
「そうよ。まさかあっさり噛み切られるとは思わなかったわ」
「食べられたら助かりそうにないな」
「そんなの当然でしょ~」
「しかし問題がいくつかある。取り敢えず今はロックイーターが俺達の事を見失っているっぽいから作戦会議しとくか」
「そうね~」
「このまま遭遇せずに脱出できるのが一番だけど、遭遇した場合の対処は必要だな」
「サラさんが如意棒で口の中を攻撃した時、ロックイーターが体液を流して痛がっているような動きが見えましたよ」
「確かに手ごたえはあったかしら。でも致命傷には程遠いダメージだと思うわ」
そういいながら折れた如意棒を収納庫にしまい込んでいた。
「俺も一度殴ってみたんだが、硬すぎてダメージが入ったのか分からなかったぜ」
「そうなると~、有効な攻撃手段が見当たらないって事が問題かしら~」
「魔法での攻撃だとどうでしょうか?確かロックイーターは火属性魔法が有効って聞いたことがありますよ」
確かに、通常のロックイーターの場合弱点とまではいかなくても有効ではあるという事らしい。
「あとはあのデカロックイーターに通用するかという事だよな」
「もし次遭遇したらシェリーさんはツインアルテミスボウで口内を攻撃すればいいとして、ヤマト君は火魔法で攻撃ね」
「もし火魔法が有効ならサラも魔法攻撃主体のほうがよさそうじゃないか。狭い坑道内だとその機動力も活かしにくいだろ?」
「……そうね。ゲンスイさんのパワーでダメだったなら……ちょっと待って。あのアダマンタイマイを倒した時のヤツ!」
「俺とサラで1点同時攻撃か!?」
「そう、あれなら……」
「試してみる価値はあるかもな。だが魔法攻撃が有効そうならそっちメインでいけよ」
「そうね」
「となると~、ゲンスイ君の~攻撃オプションがないわね~」
「俺だって魔法使えるんだぜ!?」
二人して、そういえばって表情しないでよ!
俺には転生特典『贈物』によって全属性適正があるんだ!
種族特性で初級しか扱えないのは悲しいが。
「基本的に攻撃を回避しつつ、正面に来られたり狙えそうなら口内へ攻撃って感じで立ち回ろう」
リーダーらしく話をまとめて坑道内を進むことにした。
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