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第66話

 ドワーフの里、と言っても普通の町だった。


 よく考えたら分かるのだが、ドワーフの作る武具は良質だ。それを求めて遠方からやってくる客も多い。


 近くに鉱山があるため鉱夫達が多くそのほとんどがドワーフではあるが、店を出しているのは人族や他種族も少なからずいるようだった。

 ユジャスカ帝国の人は人族至上主義ばかりかと思ったが、田舎にいけばその考えも薄まるのかもしれない。

 トーシンに行った時、美人マーサさん達も妙な偏見なんか持ってなかったし。



 そんな町並みの中、俺達は店を一軒一軒覗いて回っていた。

 だって、フィアールでもユジャスカでも見かけない品がたくさんあるんだもの。



「おうにーちゃんにそいつは合わねぇと思うぜ?」


 俺は手にしていた剣をこれでもかと凝視していたら店主に声を掛けられたのだ。初対面なのになかなか馴れ馴れしいが嫌いじゃない。



「この剣変わった形だけど、おっちゃんが作ったの?」


「おう、もちろんだぜ。で、その剣買うのかい? 獣人には勿体無いがな」


 そういって自慢げにしている店主は、ドワーフ族らしくずんぐりむっくりな体型ながらしっかり胸を張っている。


 最初から買うつもりなんか無いので見ているだけな訳だが、これ、剣と刀の間のような形をしている。それだけでちょっとカッコイイのだけど俺が凝視しているのは別の理由だ。


「この剣の形だと強度が落ちる分、切れ味に特化してるんですね。それに、微量だけど高硬度のアダマンタイトが入って不足している強度を補ってる。おっちゃんもしかして凄腕なんじゃない?」



「こいつは驚いた。まさか獣人のにーちゃんがそんな目利きできるなんてなっ。にーちゃん面白いやな!」


「これでも一応鉱物を使った研究者なんですよ。冒険者をしながらだけどね」


「獣人が研究者ってか。それだけ聞くと只の笑い話にしかならんが、他でもねぇ自慢の武器の製法を見抜かれちゃ信じるしかないな」


 いや、製法までは分かりませんけど?

 でもま、気に入ってくれたのなら都合がいい。


「実は、アダマンタイトを扱える人を探してるんです」


 この言葉を聞くと店主の表情に一瞬の緊張が走ったのが分かった。

 あたりをキョロキョロ見て周りに人がいないのを確認しているが、元々裏路地にあるこの店に客足は無さそうだったよ……?



 でもなんだろう?



「にーちゃん、なんでそんなもん探してるんだ?」


 営業スマイルだった店主が真面目な顔で聞いてくるけど、だから何があるんだよ。


「自作の武器を作りたいんだけど、アダマンタイトは精製しないと扱え無さそうだからさ。精製してくれる人を探してここまで来たんだけど……」


「なんだと? じゃあアダマンタイトの原石を持っているのか!? ちょっと見せてくれないか!?」


 ちょ、近い!!

 むさくるしいおっさんが超至近距離で放つプレッシャーは激しい。


「いいけど……」


「頼む!」



 収納庫(インベントリ)から一番小さいアダマンタイトを取り出し見せると


「でけぇ……こいつは凄いな。これだけ純度の高いアダマンタイトを見るのは久しぶりだぜ。ぜひとも精製してみたいもんだ」



 まるでおもちゃを与えられた子供のように見入ってやがる。おっちゃんなのに。




「おっちゃん精製してくれる?」


 俺が声を掛けるまでアダマンタイトを見入っていたおっちゃんが我に返ると


「やりたいのはヤマヤマなんだがなぁ……今すぐには無理だな。いやまてよ、にーちゃんたしか冒険者もしてるとか言ってたか? 強いのか?」



「まぁ、アダマンタイマイを討伐出来る程度には強いと思うぜ」


 見ろこの俺の腕っぷしを!

 つい力こぶを見せつけてしまったが、よく見たらドワーフのおっちゃんも大概筋肉マッチョだった。


 なぜかドワーフのおっちゃんが負けじと筋肉を見せてきた。

 うん、スルーしよう。


「……。」


不自然な沈黙。なんだよ?


「アダマンタイマイを倒したのか! それでこんな大きい原石を持っているんだな」


 沈黙なんてなかったように話し始めたと思ったらなんか納得されちゃった。


「で?」


「ああ、そうだ。簡単に言うとだな、こいつを精製するためには高濃度圧縮炉が必要なんだが現在そいつは使用不可になっているんだ」


「なんで?」



「鉱山に魔物が出てな。炉を動かすための材料が手に入らなくなってるから動かせないんだ。だが、その魔物が討伐されたなら再び動き出す」



「なるほど、じゃあそうなれば精製してくれるのか?」



「ああ、いいぜ!」



「で、どんな魔物が出るんだ?」



「ロックイーターって魔物だ」



「岩を食べるミミズみたいな魔物だろ? そんなに強いイメージないな。よっし、じゃあ早速行って殲滅してくるぜ!」


 ロックイーターなんてチョロいチョロ松だぜ。


 俺はサクッとアダマンタイトを回収して収納庫(インベントリ)に突っ込むと、店を出て仲間のいる宿へとひとっ走りしたわけだ。店を出た後に


「ちょっと待て~、ただのロックイーターじゃない……」


 なんて声が聞こえたような聞こえなかったような。

 魔物退治するだけで目的達成!

 善は急げ!

 スタコロラサッサ~!

最後まで読んで頂きありがとうございます

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