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第65話

「おい犬ころ」


 心なしか最初よりはトーンが下がってはいるようだが、人さまを犬扱いはおかしいだろ。


「ああん?」


 俺達の馬車を並走するように地竜(アースドラゴン)を寄せて声を掛けて来た。



「貴様のその武器どういう仕組みだ?」


 ふふん、出発時に見せた俺の打撃力にビビってたからな。


「これは世界中のどこに行っても買えない、俺のオリジナル武器だ。非力なお前が手に入れることは一生無いから安心しな」


 だが俺は敵に塩を送るようなアホな真似はしないのだよっ!

 ふはははは!



「チッ。野蛮な犬ころ族らしいな」


 なんなんだ、いちいち喧嘩を売ってきやがって。

 わざわざ答えてやったというのに舌打ちとは人としての常識もないのか。



「ヴァングル、仲良くしないとダメだよ」


「しかしお嬢様、こんな獣臭いヤツラと仲良くなど……」


「それから、お嬢様っていうのも止めてね。もう王女という立場は捨てたんだから。それに死亡扱いにしたのに政敵にバレたりしたら大変だからね」


「承知しました。ではヤマト様……」


「様も不要。もう今の僕はただの冒険者なんだからねっ」


 なんだからねっ、って言い方がすでに冒険者のそれとは違う気がする。


「しかし、いえ、分かりました。ではヤマト殿とお呼びさせて頂きます」


 それもどうだよ。駆け出しの冒険者、しかもまだ子供相手に。違和感しかないがこいつからしたらこれが最大限の妥協なんだろう。

 その証拠に苦悶の表情だったからな。


 いい物が見れたぜ。こういう手合いの苦しむ姿ってのはいいねぇ……



「前方~、倒木かしら~?」


 進行方向を見ていたシェリーさんの声に俺も前方を確認する。


 確かに、道を塞ぐような形で木が倒れていた。


「俺の出番かな?」


「そうね~、お願いするわ~」



 現代と違い道がきちんと整備されていることの方がレアなこの世界、旅をしていたら今までにもこういう事はよくある。

 そして大抵その対処係は俺だ。



 なぜなら、力持ちだからなっ!



 さーて、今回も俺の華麗な姿を見せて惚れ直させるか!

 馬車を降り倒木のある場所まで行くと邪魔な倒木をぶっ飛ばそうと右の強化腕(パワーアーム)に魔力を込めた時だった




「気を付けて~、囲まれているわ~」

「野盗だ!」


 

 気の抜けた、えま~じぇんし~を伝えるシェリーさんの声とほぼ同時に突然のヴァングルの声。


 慌てて回りを確認。


 左右から黒装束の野盗が、10人以上!?

 後方は見えないが、もしかしたらいるかもしれない。


 右側にサラ、左側にシェリーさん、後方にヤマトとそれを守るようにヴァングルが陣形を展開していた。


「おい犬ころ! さっさとこっちに来てヤマト殿を守れ」


 相変わらず俺に喧嘩を売ってくる態度は許せないが、俺達の馬車後方に陣取ったヴァングルが見えたので放置してても多少なら持つだろう。殲滅優先でいくか。



「お前が死んでも守れ!」


 ヤマトはシェリーさんの近くにいるし、サラはもう飛び出して右側の野盗を倒して回っている。

 さすがサラだ。相変わらず素早いな。


 てことなら俺は左側を倒すべく駆け出す。


「犬ころお前バカか!? さっさと倒木をどけるかこっちにきてヤマト殿を守るかの二択しかないのがなぜ分からん」


 俺が殲滅に回ったのを見て文句を言っているが聞こえんな。


 おっと、早速一人目を殴り飛ばしたら二人目がナイフで突いてくる。


 が、遅せええよ!


 手で払いのけると同時に相手の体制を崩し、殴り飛ばす。そして次の敵に接近、殴り飛ばすを繰り返すとあっという間にこっち側の殲滅は完了した。


 馬車を挟んで反対側を見ると、丁度サラも殲滅完了したようだ。


 そして馬車後方ではヴァングルがヤマトを守るようにしてはいるものの、俺達の殲滅速度が速いので接敵されずにすんだようだ。


 シェリーさんもヤマトも援護射撃の出番すらなく終わっていたのだ。


 

「んじゃ倒木どけるぞー」


 みんなに声を掛けて邪魔だった倒木を殴りつける。


 倒木はその姿を木屑へと姿を変え俺達に道を空けたのだった。



 さっそく出発しようとすると、シェリーさんとサラが野盗の武装を解除していた。一応俺は殴り飛ばして戦闘不能状態にまでしておいたので危険はないと思うが。


「懲りずにまた襲われたら面倒だしね」


「そうよ~、それに~こんなのでも売ればお金になるわよ~」


 なんでわざわざそんな手間をかけるのか、サラとシェリーさんがそれぞれ武装解除して回っているのを見ていたら聞かなくても答えてくれたのだった。





 野党に襲われて以降、魔物に襲われることは何度かあったが特別強い魔物と遭遇することもなく、ほぼ俺かサラだけで倒して旅路は続いた。


 王都への道を逸れてドワーフの里へと向かう道に入ってからは、これは道だろうか疑問に思うようなところも多々あったが流石うちの地竜(アースドラゴン)は優秀でどんどん進むことが出来た。





 そして無事ドワーフの里へたどり着いたのだった――


最後まで読んで頂きありがとうございます!








実はアルファポリスにて(ちょっと内容違うけど)次話を先行配信しておりますのでよかったらどうぞ!




https://www.alphapolis.co.jp/novel/286453861/744200632

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