第62話
カポーン
「いや~、こんな広い風呂は久しぶりだ~」
「そうなんですか?」
流石に豪邸だけのことはある。風呂の広さも個人宅の域を余裕で超えている。銭湯サイズだ。
旅の疲れを癒そうと美人マーサさんの勧めで、男女別にお風呂を頂いているわけだ。とはいえ、このデカイ風呂にヤマト君と二人なわけだから贅沢感満載。
「ああ。一応自宅に風呂は作ったんだけどな。個人宅では大きめの浴槽にしたんだが、いくらなんでもこんなにデカくない」
「自宅に作ったんですか。流石前世日本人ですね」
「イルミネーション付きジャグジーでなかなかの自信作なんだぜ。そのうちヤマト君も機会があるだろうから楽しみにするといいぜ」
「あの、これから同じパーティーで旅するわけだし、そろそろボクの事ヤマトって呼び捨てで呼んで下さい」
「ん? ああ、そうか。じゃあそうするか。ヤマト」
「……はい。あ、えと、そういえば、ジャグジーってこの世界初なんじゃ?」
少しヤマトの顔が赤いな。もう湯あたりしてきたか??
まぁ、のぼせたら自分で出るだろう。
「そうかもな。しかも露天だぜ」
なんて話をしていると俺も少しのぼせ気味になってきたので湯船の淵に座る。
するとヤマト君も同様に横に並んで座る。
しっかし、こいつホント体の造りからして女みたいだ。色は白いし腰はくびれているし。
ただ、残念ながら股間にはぞうさんがいるんだよな。お子様仕様だけど。
「なんですか急に。ジロジロ見ないでくださいよ」
「女として育てられたって言ってたが、ホントに女っぽい体つきだな」
顔が真っ赤になって手でガードするように胸と股間を隠す。
おいこら。
そこで胸を隠す行為こそ女っぽいだろ!
「恥ずかしいじゃないですか、そんなに見ないでくださいよ」
身長差があるので座っていても見上げる形になるヤマト君なわけだが、照れながら上目遣いで見られるとなんかちょっと……
いや、気の迷いだ!
俺しっかりしろ!!
「僕獣人の裸なんて初めて見ましたけど、筋肉とかすごいんですね」
「だろ? 獣人でなおかつ鍛え上げた肉体に惚れちゃいそうだろ?」
褒められてついマッチョポーズをとってみる。
人族の時とは比べ物にならない程全身に筋肉がついてるんだぜ。
「そう……ですね」
「しかも成長期!まだまだ伸びしろがあるから楽しみで仕方ないぜ」
獣人族がどこまで成長するのか分からないが俺まだ15歳だし、きっとまだあるはず!
っていうかあってくれ!
「それに獣人っぽく毛量もすごいんですね」
顔やお腹は人族と変わらないが、手足や胸にはがっつりあるさ。
だって獣人族だもの。
「雄々しくてカッコいいだろ。それに比べてヤマトは……ツルッツルだな」
「だって10歳だもん。これからですよ」
「そうだな。さて、そろそろ上がるか」
「じゃあ僕も」
なんて話ながら風呂から上がった。
風呂では口下手な感じはなくなっていた。どうやら家庭の事情を打ち明けた事で心を開いてくれたのかなと思う。
それはそれで嬉しいのだが、口下手キャラからネラーキャラへの変身は今後楽しめなくなったのかもしれないと思うとちょっと残念な気もする。
風呂から出るとサラ達と合流して明日からの動きについて話し合う事になった。
ダンジョンで手に入れたアダマンタイト、これを魔力筋研究素材として活用するため自宅に帰るつもりだったのだが、シェリーさんから待ったがかかったのだ。
「アダマンタイトって~、硬度が高すぎて通常の鉱物のようには扱えないわよ~。まずは~、扱える形にするのが先じゃないかしら~」
「確かにそれは重要ね。私も少し弄ってみたけど、どうにもうまく精製できなかったわ」
「だったらどうすればいいんだ?」
「一番有名なのは~、ドワーフに精製してもらう方法かしら~」
なるほど。だったらそうしようじゃないか。
って言っても、ドワーフに知り合いなんていないぞ?
「精製してくれそうなドワーフに心当たりは?」
「そうね~、竜人族の国でドワーフの里があって~、そこになら行った事があるわ~」
竜人族の国ってめっちゃ遠いですやん。
「それだったら僕も噂を聞いたことがあります。ここから王都へ向かう途中に山よりへ進路を変えた先にある地方でドワーフの里があるって」
「よし、決まりだな!明日はそこへ行こう」
こうして俺達はアダマンタイトを精製してもらうため、ドワーフの里へ向かう事となった。
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