第56話
背中にツインアルテミスボウの2連撃、腹部にサラの強化靴装備の蹴りをほぼ同時にくらった訳だがもちろん俺は冷静に状況を判断できるほどの余裕はない。
っていうか痛みで何も考えれない。何も考えれないのに痛い。
痛い。
痛い。
痛い。
痛くて
痛くて痛くて
痛くて痛くて痛くて
痛くて痛くて痛くて痛くて痛い!!
ふと、喉に液体?乾いた喉に潤うそれをもう無意識で飲みこんでいた。
喉に潤いを感じると、急に頭の中がクリアになってきた。
なんで俺こんなに痛い思いしてたんだ?
シェリーさんに撃たれてサラに蹴られた?
なんで俺は仲間から攻撃されたんだっけ?
俺が攻撃したから?
バカな。俺が仲間を攻撃するわけがないだろ?
いや、ヤマト君を殴った手応えが俺の手に残っている。
あの儚い少女のようなヤマト君を俺が殴った?
人族の、それも吹いたら飛んでいきそうなほど貧弱そうな子供。
獣人の俺が殴れば無事なはずがない。
死んだか?いや、違う。俺が殺した?
……嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
夢だ。これはきっと夢だ。
だから、目を覚ましたらきっと宿屋のベッドで。
そうだろ?
身体の痛みはいつの間にかなくなっていた。
でも。
この痛みはなんだ。
胸を締め付ける痛み……
仲間を殺した罪悪感。
そして頬を撫でる感触。
撫でる?いや違うなもっと強い。
頬を叩く感触、いやもっと強い。
……痛い痛い
痛い!!!
「早く起きなさいよっ!!!」
気付くといつの間にか目の前にはサラの顔が。
そして俺の顔はサラにビンタされていた
「いたっ! たっ! たっ! 痛い!!」
俺が上げた声でサラのビンタが止まった。
「よかった、無事だったね」
「いや、顔面が爆死しそうです……」
サラは俺の顔を見たのにそこから視線を外す。
「立てるかしら?」
「ん? ああ、大丈夫そうだ」
あれ?俺デカマイ戦で結構満身創痍な感じだったよね。そして悪魔族が現れてそのままサラ達と戦闘して……
「ヤマト君がポーション飲ませてくれたからケガはある程度治っているでしょ?」
確かに、体中にあった傷は癒えてた。
ただし、顔以外。
「え? ヤマト君無事なの?」
「ええ、大丈夫よ。それよりも今は」
サラの視線の先では悪魔族とシェリーさんが戦っていた。すぐ近くにはヤマト君も魔法で戦いを支援していた。
「あまり長くは持たないわ。私達も加勢にいくわよ。今度は誘惑なんかに掛からないでね」
状態異常攻撃にいつの間にかハマっていたのか。
舐めやがって!
「オイタをした悪魔にお仕置きしてやるぜっ!」
そうして俺とサラは戦線へと向かっていった。
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