第53話
戦闘を開始してからどのくらいの時間がたっただろうか。
「うらぁぁぁぁ!!!」
掛け声とともに真正面からデカいアダマンタイマイの顔を殴る。お返しとばかりに首元から生えている触手が金属の棒のように飛び出して来るのをいくつか躱し、いくつかを防御で耐える。
延びきった触手をアッパーで攻撃するが、打撃しても触手は柔らかくダメージを与えられない。俺に攻撃してくるときは硬いくせに。
「ハァハァ……なかなか根性見せやがるな」
「ゲンスイさん、このまま消耗戦を続けるのは分が悪いわ」
俺の攻撃は基本顔面殴打だ。ちゃんと全てヒットしているがどこまでダメージが入っているのか分かりずらい。
一方で相手の攻撃はというと、噛みつきやブレスは回避できても範囲魔法と触手攻撃はたちょくちょくヒットしていた。
俺が獣人で頑丈だからって言っても結構痛いんだ。まぁ根性で我慢するがな。
サラはその機動力から範囲攻撃を見てから走ってもギリギリ回避に成功している。ただ、サラの場合スタミナ面が心配だったりする。
シェリーさんとヤマト君は中距離から主にデカマイ(デカイアダマンタイマイ)の前足を攻撃している。
あれ?よく考えたら一番分が悪いのは俺じゃね?
「俺達が引いたからってこいつが見逃してくれるとも思えないぞ?」
真正面から顔面殴打を繰り返している俺にめちゃめちゃヘイトが溜まっているのだから。
「アダマンタイマイを倒した最後の一撃をもう一度出せないかしら? あの威力がもう一度出せれば!」
「よし、一点同時攻撃だ! 次の範囲魔法直後頭頂部狙いでいくぞ!」
こちらの作戦を理解しているとは思えないが、丁度デカマイから魔法陣が光り出す。咄嗟にサラは後退し魔法の範囲外へと逃げる。
俺はすぐに少し後退しつつガード姿勢を取る。
直後魔法が発動、俺は一瞬爆発に巻き込まれるが根性で耐える。
数秒でデカマイの触手が攻撃してきたのでそれを往なす躱す。
範囲外から一気に接近、如意棒で上空に飛びあがったサラが強化靴全開で蹴り放つ。そこに俺もタイミングを合わせ強化腕全開で殴り込む。
強化腕と強化靴全開の攻撃が一点同時に行われたその攻撃は、単発の時とは比べ物にならないほどの威力と手応えでデカマイの後頭部から顎の下まで貫通した。
頭部を完全に破壊されたデカマイはその巨体が崩れ落ち、そして動かなくなった。
俺はボロボロになった全身を顧みることなく右腕を天に付きあげ叫んだ。
「俺達の愛の勝利だ!!」
「やったぁー!」
喜びながらサラが俺の胸に飛び込んでくるのを受け止めると、すぐにシェリーさんとヤマト君も喜びながら俺達の所に来た。
そこへパチパチパチパチと拍手が聞こえてきた。
デカマイを撃破!
やったぜ!




