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第49話

「右前方から獣型魔物接近よ~」


「了解よ!」

 シェリーさんからの報告にサラが如意棒で攻撃開始する。


「正面地中から何か来るわよ~」


「OK!見えている、任せろ」

 突然前方の地面が盛り上がり始めた所へ、真上から強化腕(パワーアーム)装備の左腕で殴りつける。手応えあり!!結局姿は確認できなかったが、細かいことは気にせず周辺警戒へと移行する。



「魔獣の数が多いわ!数匹くるわよ」

 先ほど迎撃していたサラのほうはどうやら群れだったらしい。どうやらイノシシ型の魔獣が突進してくる。


 サラによる如意棒弾幕を抜けて来た1匹を強化腕(パワーアーム)で殴り飛ばす!が、体調2メートルを超えるこの魔獣は重量も中々だ。地の果てまで吹っ飛ばそうと思ったのに、分厚いタイヤを殴ったような手応えで数メートルしか飛ばなかった。


「耐久力が高そうね~」


「牽制します!火弾(ファイアーボール)!!」

 中列からヤマト君が魔法による攻撃を、次に走り抜けて来たイノシシ魔獣へとぶつけていた。


「左前方から~、巨大蛇よ~!撃ち落とすわね~」

 敵を発見すると同時に、シェリーさんのツインアルテミスボウから魔力矢が放たれ巨大蛇に命中していた。


「てえぇぇぇいいい!!」

 ヤマト君が牽制していた魔獣にサラの強化靴(パワーブーツ)で強化された蹴りが命中、絶命した。



「とりあえずこれで周辺に敵はいなさそうよ~」


「ふぅ、結構強い上に数襲ってくる。さすがにこのペースだと厳しいな」


「もう少し進めば川がありそうよ」


「そこまで行ってみよう」


 改めて進軍を開始する。


 このフロアに来て何度目の襲撃だろうか。毎度毎度複数の種類の魔物が群れで襲ってくるこのエリアは単純に火力があるだけでは進めない。戦い続けるスタミナも必要な要素のようだ。



 ものの数分進軍したところで、川へと辿り着いた。


「この川を上流へ向けて行ってみようか」

 アダマンタイマイと言えば、体長が1メートル以上、大きい個体だと2メートル近くになると言われているがその生態系は明らかになっていない。ただ、亀のような魔物で海や川、湖なんかで目撃例が多い。


 川辺で少し休憩を挟んで探索は続く。




◇◇◇◇



 索敵をしながら川辺を上流へ向けて探索すること1時間程度たっただろうか、違和感を感じた。


「シェリーさん、周辺の索敵状況は?」


「今のところ~、見当たらないわね~」


「おかしくないか?」


「急にどうしたのよ」


「急に敵がいなくなるのは良くないことが起こる前兆……」


「ヤマト君ったら、不吉な事言わないでよ」


「いや、俺もそう思う。定期的に襲ってきていた魔物がさっきからぱったりと止まった。原因はおそらく……」


「強い魔物が存在するっていいたいのね~」


 うん、そうなんだけど。相変わらずシェリーさんの間延びした声は緊張感がない。



「シッ~!皆隠れて~!」


 急に小声で警戒を促すシェリーさんだが、やはり緊張感に欠ける。

 が、それは置いといて、何か見つけたらしいのでおとなしく指示に従う。


 木陰に隠れながら前方の様子窺うと、川辺に2匹のアダマンタイマイを発見した。しかも2匹とも体調2メートル位はありそうで、大物だ!


「よし、左のヤツは俺がやるから3人で右のヤツを任せる!」

 作戦立案はもちろん俺だ!あらゆる可能性を考慮に入れた上でこれ以上ない完璧な作戦と言える。


「ゲンスイさん一人で大丈夫?」


「愚問だ。任せろ」


「ゲンスイ君が抑えている間に~右側を集中攻撃~。撃破後左を皆で叩くわよ~」


「わかったわ!」

「が、頑張ります」


「ヤマト君は~、無理しないようにね~」

「はい」


 ここに来るまで彼の動きを見る限り、特別突出した能力は見られなかった。駆け出し新人冒険者程度のレベルだ。そういえば、彼の転生者特典、贈物(ギフト)ってなんだ?


「カウント始めるわ。3、2、1、ゴー!」



最後まで読んで頂きありがとうございます

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