第44話
階段を下りてきて一つ下層へと辿り着いた俺達だが、そこに広がる光景に閉口させられた。
主にサラが。
一つ上の層で幅20センチほどの一本道、それ以外は奈落というのがあり高所恐怖症っぽいサラが散々な目に遭ったわけだが、この層も同系統だったからだ。
「これ~、さっきの所よりも難易度高いわね~」
「落ちたらどうなるのか分からないのは上の階と一緒だが、足場が少ないな」
「アクションゲームにありそうね~」
そこにはまたしても崖があり向こう側へと辿り着くためにはたまにある足場に飛び乗りながら進むらしい。しかしその足場が完全にゲームの世界だろうか、サイズはそれなりにあるが浮遊ブロックだ。ゲームっぽいという印象が一番ピッタリくる。
「これ、また同じ作戦でいくか、サラどうする?」
せっかく回復していたサラがまたしても精神的に追い詰められていく。
「崖下が見えないのがダメなら~、一度光魔法の照明を撃ってみるわね~」
俺達の返事を聞く間もなく、サクッと魔力を纏め上げると崖下へと放った光源により様子が映し出された。
だが、ただ深いということが分かっただけで底などは見えなかった。途中いくつか浮遊ブロックはあったが、落ちてたまたまブロックで助かるなんてことはないだろう。
「私は役立たずね。ごめんなさい、ゲンスイさんにすべて任せるわ」
崖下が見えても見えなくても結果々だったようだがしおらしいサラもかわいいのでもう何でもOKだ。
すっとサラの前へ進み出て背中を向けつつしゃがむ。
今度はおんぶでウハウハ大作戦だ!
というのは建前で、おんぶのほうが動きやすいし最悪手が使えるからね。
背中にギュッと抱き着いてくるサラを背負い、さっそく出発だ。
「魔物がいるだろうから気をつけて行きましょ~」
気分はマリオ?いや、ロックマンだろうか。割とひょいっとジャンプしならが足場ブロックを駆け抜ける。途中、イービルアイや他にも空中に漂う様にいた魔物からの攻撃を躱しながら進む。
何度か視界確保の為シェリーさんが光魔法の照明を放っていたのだが、今いる場所よりもかなり下にあった浮遊ブロックの上に誰かがいるのが見えた。
普通に考えたら魔物なんだろうが、どうにも違和感を感じた。
「シェリーさん、あそこにもう一度光源を放ってくれないか?」
「何か見つけたのかしら~?いいわよ~。照明」
光源によって暗闇から浮かび上がったのは、浮遊ブロックの上でぐったりと倒れている一人の女の子だった。
「死体か……? あっ、動いたな」
「かすかにだけど~確かに動いたわねぇ~」
どうしたものかとシェリーさんと視線を交わすが結論は出ず。
「さて、どうする?」
まずは意見を聞いてみよう。
「私の感覚だと~、放置するってことはあり得ないんだけど~」
実のところ、俺にも放置する考えはない。結局のところ最低限の道徳心みたいなものが同じなのはありがたい。
ただ、どうやって助けに行くかという点だ。
俺はサラをおぶっているから自由度は結構下がっている。今のところ魔物とは距離を取ったので攻撃されていないが、向こうの射程に入ったら遠慮なく攻撃されるだろう。
「もうすぐ向こう岸に着きそうよ~、一度渡り切って出直しましょ~」
「了解だ」
思ったよりもあっさりと辿り着くと、一度そこでサラを降ろす。
「サラ、着いたぞ。大丈夫か?」
「ええ、ありがとう……」
とは言うもののやはり怖かったのだろう、その場に腰を下ろしてしまった。
そして俺はというと、背中に感じていた柔らかい感触が終わってしまった事を残念に感じつつも今度こそは声に出すなどという失態をしないよう細心の注意を払っていたのだった。
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