第42話
崖から延びる幅20センチ程の一本道を一列になって進み始めて20メートル程進んだところだろうか。
サラはかなりへっぴり腰だが如意棒を水平に持ってバランスを取りながらなんとか進んでいる。いつもの凛としたサラもいいが、こうやって少し弱さを見せているサラも可愛い。
崖下を覗くと暗くて底は見えないが、落ちてしまえばただでは済まないだろう。ましてここはダンジョン。どうせ碌なことにはならないのが確定しているようなものだ。
「ゲンスイくん~、右前方上の方何か動いたわよ~」
シェリーさんの声に視線を向ける。暗くてあまりよくは見えないが、確かに何かが動いているような気がする。
獣人族の俺は結構夜目が効くので、何が動いているのか凝視していた。
すると、何かが動いた辺りから球状の空間が歪んでいるような何かが飛んできた。
咄嗟に強化腕の籠手部分で防御すると衝撃と斬撃が混じっていたが耐えきった。
「気をつけろ、風魔法だ」
「やっかいね」
「ならばこうするまで!!」
両手に魔力を集め炎の塊を作り出す。
「俺の投球は時速300キロオーバーだぜ! うりゃあああ!」
先ほど何かが動いた辺り目がけて投げつけてやった!
炎の塊が目標地点辺りまで行くと、炎が光源となり魔法を撃ってきた正体が見えた。
「あれはイービルアイね~。あまり強い魔物ではないけれど~」
「この状況では歓迎できないな」
見えた魔物は大きな一つの目玉に羽が生えた小型の魔物。強く無いと言っても、このフロアで空を飛べるのはかなりのアドバンテージだ。
「ゲンスイくん~、もう一度炎を飛ばしてくれたら狙い撃ってみるわよ~」
「よしきた!」
もう一度炎の塊を出すために魔力を集中しようとした時、向こうからまたしても風魔法が飛んできたので防御に徹する。
一発耐えた後再び炎の塊を作り出そうとするが、今度は別の方向からも風魔法が飛んできた。
慌てて防御姿勢に戻るがいろんな方向から次々と撃たれては魔法を作り出せない
「くっそ。サラ、魔法撃てないか?」
敵の魔法が後ろに流れないように体を張って壁役をしながら後ろの様子を見ると、どうやら崖下を見てしまったようで顔がフリーズしていた。
「……無理そうだな。シェリーさん打開策は?」
「単体攻撃だと命中率が低いし~、遠距離範囲攻撃出来るオプションはないわね~」
いくら魔法の威力が低いとはいえ、こちらから攻撃できなければ負け確定だ。くそぉ、たいして早くもない魔法攻撃なのに。
……ん?
そーかそーか。流石俺。
とびっきりの作戦を思いついたぜ!
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