第32話
頭脳派脳筋は毎日更新だよ!
俺達はギルドにて研究に欲しい材料であるアダマンタイトをドロップするアダマンタイマイの情報を得た。その際、パーティー登録をしているのだが……。
「パーティー名に可愛さは必要か?」
「可愛さよりも覚えやすさが必要だと思うわ」
「可愛さは必要よ~。だって~、女の子なんだもん~」
「だもん~って。俺達の中で一番年上n……はぅ……何でもないです」
ボウガンの射線をこちらに向けるのは良くないと思います!
「女性に年齢の事を言うのは~デリカシーがないわよ~?」
「はひっ!しゅみません!」
「私はAUゴーというのがいいわね」
「それは何だかいろいろ問題がありそうな名前だ。ちなみにどういう意味か聞いても?」
「それはほら、閃きよ。別に通信会社とかは関係ないわ。ただ、覚えやすいじゃない?」
どこか言い訳しているような言い回しだな。
「アンチなんとか・ユニオン・グループの略称に響きが近い気がしないでもないけど?」
目線を合わせないのは何故かな?
「シェリーさんは何かある?」
「そうね~、可愛い名前で~。クロポンVっていうのがいいわね~。可愛いでしょ~?私の故郷では~子守歌なんかに出て来たのよ~」
「Vがヴァンガードじゃない事を祈るとして、クロポンってどういう意味かな?」
「ほら、チェスの駒でポーンってあるでしょ~。それがクロスしているようなイメージかしら~?」
子守歌で出てくるような話じゃないよな。間違いなく。
「貴族主義。宇宙。海賊。クロスした骨。91いや、97か?……何か言いたいことはある?」
こちらも一切目を合わせない上に口笛を吹き始めた。
二人の傾向が分かった。シェリーさんの出身が鉄仮面に関係するところじゃない事を祈る。
「分かった、分かりましたよ。じゃあそういう感じの名前でいけば二人とも異論はないな?」
「うん!」
「さすがゲンスイ君~、話が早くてお姉さん嬉しいわ~」
実は2人共前世ではガンヲタだったらしい。まぁ俺も嫌いじゃないからいいんだけどね。
「そうだな……木馬、4、8小隊、シャングリラ、アーク、天空人、アイアンフラワー……結構難しいものだな」
「天空人?」
「う~ん、私設武装組織じゃないかしら~」
「ふーん。変に変えようとしなくても、そのままエy……」
「ダメだ!」
「なんでよ?」
「パクるのは良くない!俺達は影響を受けただけだ!」
「めんどくさいわね」
「ワルツベル?……いやロンドンベル……とかはどうだ?」
「ギリギリセーフじゃないかしら~。ロンドンの事を知っているのは転生した人くらいだし~」
「まぁそれなら、いいんじゃない?」
「よし、じゃあ俺達のパーティー名はロンドンベルだ!紳士淑女の鐘を鳴らすパーティーって事で言い張ろう!」
「言い張ろうってあたりがゲンスイ君らしいのかな?意外にもそういう事には頭が回るのね」
「意外とはなんだ。俺が頭脳派なのは知っているだろう」
「そういうことにしておきましょ~。それよりも、登録作業を終わらせてきて~」
という事で満場一致でパーティー名が決まった。英国の鐘だ!可愛いかどうかはもう知らない。
パーティー登録は終わりユジャスカ帝国にあるギルドへの手紙を書いてもらい、俺達はギルドをお暇した。
俺達が出て行った後
「そういえばユジャスカ帝国って……まぁいっか」
と受付嬢が呟いていたとか。
さて、ギルドで情報を入手した俺達はゆっくりする間もなくまたしても遠出する事になった訳だが出発は急いでも明日以降だ。
となれば俺には一大イベントがあるわけだ。
自宅に美女2人を招いて一夜を過ごす……やったるでーーーー!!
気合を入れて帰宅したのである。
「これなら十分研究できそうね~」
「人魚討伐時の魔獣売却利益で素材いろいろ買って来たよ」
「それならサラちゃんのブーツに~」
研究者と発明家は自宅のラボで非常に楽しそうである。もちろん俺もそれに混ざるつもりでいるのだが、なぜか食事係を押し付けられ現在料理中だ。
「うん、旨い」
これでも1人暮らしを1年以上もやって来たのでそれなりに料理もできる。ちょうどいい感じに炊き上がった魚介料理を味見し、成功を確信した。
「おーい、夕食ができたぞー」
料理上手アピールでいい男の格を上げ、あわよくば一緒に入浴後ベッドインという完璧な作戦だ。また旅が始まるとゆっくり休むことも出来ないわけだから今日こそはしっぽりとしようじゃ~ないか!
「今いいところだから後にするわ」
「ごめんね~ゲンスイ君~」
おい!せっかくの自信作である回転ベッドへの道なのに一歩目で躓くとかありえん!
「まったく、何やってるんだ」
クレームをつけるというよりは、それなりに自信のある料理が冷めてしまっては勿体ないという気持ちで2人がいるラボに様子を見に行く。
そこではサラの強化靴の底に何かを仕込む作業をしていた。
「ゲンスイ君の強化腕にシザーアンカーを仕込んだでしょ~。それと同じ発想よ~」
「足の裏にシザーアンカー?それ使いにくいんじゃないか?」
「違うわよ。出し入れ自由なスパイクを仕込んでもらっているのよ。そうすることで動き回る時しっかりグリップして安定するでしょうし、蹴りの威力も上がるわ」
「なるほど、それならいいかもね」
「ゲンスイ君の時とは違って~収納スペースがとても小さいのよ~。こういう錬金はデリケートなのよ~」
さして苦労している風には聞こえない間延びした声ではあるものの、シェリーさんの顔つきはかなり真剣である。
「ゲンスイさん、これ見て!シェリーさんの発明品なんだけど凄いわよ!」
差し出してきたのは肩から首にかけて装備するような防具に見えなくはないが、触ってみた感じプラスチック程の硬さしかない。よく分からないというのが本音ではあるが取り合えず装備してみる。が、肩幅も違えば首の太さも全然違うのだからハマるわけがなかった。
それを見たサラは非常に可哀想なものを見るような目になっていたが、これ俺どうしようもなくね?
「サイズが合わないわね。じゃあもうしばらく私が借りるわ」
俺の肩に装備している、いや、乗っている物を取り上げるとちゃっちゃと自分の肩に装備してしまう。
「ぁあ~これ最高よ」
装備したあと微弱な魔力を込めたような感覚があったが、それからサラの顔は呆けてしまったかのようだ。
「なにそれ。ちょっとヤバイんじゃないか?」
精神汚染系?状態異常系?なんだ?
「ええ、かなりヤバイわよ」
相変わらず魂の抜けるような表情だが、どうやら危険性はないようだ。いや、あるのかな?人をダメにするクッションとかそういうシリーズだ。きっと。
「これマッサージ機能があるの。これさえあれば肩こり知らずね」
予想は大体当たっていたらしい。
なんだかんだラボでいろいろやっていたら俺も強化腕の続きをしたくなった。これはまだ腕だけだが続いて肩、首、胸、腹、腰、足へと開発を続け強化外骨格へとなる予定なのだ。そんなわけで少しずつパーツを作っているのだが。
「ゲンスイさんって凄いわね。とても不器用なのにこんなに精密なパーツを作れるのだから驚きよ」
それは褒めているのか?微妙なラインじゃないか?
「この獣人の身体だと人間のように細かい動きは思うようにならないんだ。それでも結構訓練して慣らして研究している」
「できたわよ~。サラちゃん、ちょっと履いてみて~」
黙々と細かい錬金作業をしていたシェリーさんが作業完了と同時にサラの足元に強化靴を持ってくる。
さっそく履いてみたサラがその場で魔力を込めスパイクを起動する。
ガスッ!という音と共に床に穴が開いてしまった。
「キャー!穴がー!!」
慌てたサラがその場で足踏みすると被害が拡大していく。
「落ち着け、止まれ!止まれって!」
俺の声で動きを止めたサラ。
「落ち着け。いいな。まずスパイクを戻そう」
サラの頭の上に大きなクエスチョンマークが見えた気がした。
「シェリーさん、どうやれば戻るのかしら?」
「それはこれからの課題よ~」
満面の笑みのシェリーさんに引き換え、俺とサラは開いた口が塞がらないのであった。
結局、3人で夕食となったのはそれから2時間も経ってからだったのだから俺の料理上手アピールは威力を発揮しなかったのを追記しておこう。
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