第31話
頭脳派脳筋は『69の日』も変わらず毎日更新中
「結構久しぶりな気がするな」
俺は冒険者ギルドに来ていた。
昨夜やっと人魚くんを里へ送り届けた後やっとフィアールの街へと帰って来れたのだ。おかげさまでというかなんというか、エリモ岬への道中にやたらと魔物とエンカウントしたのでその時に回収した素材を売却するのが目的だ。
受付カウンターを確認すると、例のかわいい子がいた!
だが俺は成長したんだ。前回は邪魔ものの乱入で失敗したが今度はそうはいかない。
奥にブラムおばさんがいないか念のため確認……よし、いない!
「こんにちは!僕ゲンスイです!お姉さんのおかげでダンジョンでうまくいきました!いやしかしお姉さんキレイですね!お名前を教えていただけませんか?ああ、受付も暇そうだしよかったらこれから向かいにある宿屋で親睦を深めませんか?心配しなくても大丈夫、お話するだけです!多少のスキンシップはあるかもしれませんがそれはあくまで合意の上だから安心して将来の二人を…」
ブラムおばさん不在の安心感に反比例して逸る気持ちと焦る衝動に少しばかり早口になるのは自覚しているし、たぶんギルド入り口からカウンターまでの距離を一瞬で詰めたので縮地とか使えるのかもしれないがそれらは些細な事だ。
「え……えと……」
俺の男らしい肉体と心意気に見惚れたか?
「はいはい、ゲンスイさんそこまで。この子困ってるじゃない。何をしに来たのか忘れたのかしら?」
「あら~ゲンスイ君ったら~、私というものがありながら~受付の子にまで手を出すのかしら~?」
背後から殺気を叩きつけるのはぜひとも止めて頂きたい。そしてシェリーさんは微妙に誤解を生むような発言は控えて頂きたい。
「お?ゲンスイじゃないか。久しぶりだな……なっ!?」
人の恋路を邪魔するやつは基本的に放置が方針の俺だが、いつもと様子が違うため声の方を見てしまった。
以前単発でパーティーを組んだリグレだったのではあるが、俺の横にいるサラとシェリーさんを見て軽くフリーズしているようだ。
うん、スルーでいいな!
「それで今日の用件なんだけどね」
受付の美人さんとの話を再開したところ、不穏な音声が耳に入った。
「こんにちは、お姉さん方お綺麗ですね」
「おいリグレ表出ろ!なに人の女に声かけとんじゃい!」
サラとシェリーさんをナンパしようなんざ不逞野郎だ!
「はっ!?いや俺は別にちょっと挨拶しただけじゃないか」
「お前は挨拶でナンパするのか?脳みそ下半身についてるのか?」
「いや、お前にだけは言われたくない」
俺を不機嫌にする理由はまだあった。
2人とも声かけられて満更でもない顔してんじゃないよ!!!!
「あら~、ゲンスイ君。綺麗なんて言われて嬉しくない女性なんていないのよ~」
それは嘘だ!
何故ならば俺が声を掛けた受付のお姉ちゃんはそんな顔してないもん!
「シェリーさんはいつだって綺麗だよ!もちろんサラだって綺麗だよ!」
「ありがと~ゲンスイ君~」
「私はついでかしら?」
ジト目で見るのは止めて頂きたい!俺にはそういうのをご褒美だと受け取れるほど上級者ではない!
「そんな訳ないじゃないか!俺はいつだってサラの為に命を張れる男だぜ」
「じゃ、俺用事あるから。お姉さんたちもまた会えるのを楽しみにしてるよ」
不穏な空気を感じ取ったのかリグレはいつの間にか距離を取っていたのだが、捨て台詞を吐いて出て行ってしまった。
「じゃあ私のほうがついでなのかしら~?」
リグレの事はもうどうでもいいのか、俺に上目遣いで近づいてくる。それはとても嬉しいけど。嬉しいけども!
「そんなわけないじゃないか!俺はシェリーさんを守るために生まれて来たんだよ」
目を合わせて真剣に俺の気持ちを伝える。
「ふふふ。からかうのはこのくらいでいいかしら。シェリーさんもいい?」
「なっ!?からかっていたのか!?」
「ええ、いいわよ~。ゲンスイ怪人100面相も見れたしね~」
2人が仲良しなのはとてもいい事だと思うの。でもね、俺の心臓をもう少し労りたい。労って欲しい。
「それで、用事をすませたいのだけど。魔物素材の買い取りをお願いしたいのよね。ここでいいかしら?」
そんな俺の心痛など取り合わずサラが手続きを進めていた。結局、買い取りに出す量が多かった為受け取りは明日になった訳だが買い取り以外の用件をいつの間にか話していた内容にいいものがあった。
「アダマンタイマイ?」
「昨日届いたばかりの情報ですが、遠いためもう討伐されてしまっているかもしれません」
「アダマンタイマイって、鉱石アダマンタイトをドロップするレアな魔物の事よね?」
俺達が以前手に入れたミスリル鉱石程の魔力親和性はないものの、硬さだけで言えばそれを上回るレア素材だ。俺達は研究の為鉱石関係の情報は聞き逃せないものだ。
「その情報、詳しく!!」
俺達3人が目の色を変えて詳細を確認しようとカウンターに身を乗り出したため、少し引かれたがそんな些細なことはどうでもいい。
「隣のユジャスカの帝国は分かりますよね。そこの帝都にあるギルドの管轄でアダマンタイマイが目撃されたようで、広く討伐者を募っているようです。危険すぎるので実力のあるパーティーしか受領出来ないようになっていますね」
「ユジャスカ帝国って人族の国よね?」
「そうよ~、人族は大小合わせて6つの国があってね~。今いるラングリット王国の南西に位置する国ね~」
「実力のあるパーティーしか受領できないというのは?確かにアダマンタイトはレアな魔物だがそれなりの対処や人数がいれば可能なはずだが?」
「それは出現を確認したのがダンジョンだからのようですね。目撃のあった場所までのダンジョンがなかなか難易度が高いようで、まだ攻略も完了していないようです。だから危険性を周知する意味でも限定としながらも広く募っているんですよ」
「それで~、そのクエスト私達でも受けれるものかしら~?」
「ゲンスイさんと3人でということでしょうか。それならばまず3人でパーティーを組む必要がありますね。お二人は冒険者登録されていますか?」
二人とも冒険者登録はすでに行っていたのでここではパーティー登録のみ行った。
冒険者ランクは俺もサラも研究の傍ら冒険者をして資金を集めていた事もあり俺達のランクは下から3番目のDランク、シェリーさんは冒険者もしているが発明のため旅をすることが多かったようで下から2番目のEランクという3人パーティーが出来上がった。
「リーダー設定とパーティー名はどうしますか?」
「リーダーまもちろん俺。パーティー名は……」
「ちょっと待って!名前はちゃんと考えた方がいいわよ」
俺のネーミングセンスを疑っているのかのように遮られた。ついこの前俺のネーミングセンスの良さを披露したばかりだというのに、だ。
「そうね~、せっかくだから可愛い名前がいいわね~」
可愛さが必要か?とも思うが、俺の独断で決めるより話し合って決めたいという気持ちも分からなくもないため受け入れる事にした。
「じゃあパーティー名は後から決める。他に手続きは?」
という事でその他の手続きをしておいた。
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