第27話
頭脳派脳筋は健全に毎日更新中!
俺は御者台に座って一路、ベルモ岬へ馬車を走らせていた。エリモ岬の先端が見える辺りまでやってきた。
ちなみに、サラとシェリーさんの水着姿は控えめに言って最高でした。
二人の水着試着会からお触りしようと飛び掛かったりしたり結局みんなで海に飛び込んだり。あの光景を思い出すだけで俺は幸せだ。
「あ!あそこー!」
せっかく想いを馳せていたら、荷台に積んである浴槽(水槽)から人魚くんが声を掛けて来た。
「ここがどうした?」
「見覚えがあるよ。このまままっすぐ行ってー」
そう言って指さした先はエリモ岬の先端だ。どうやら情報は正しかったようだと安心した。一方で不安も募ってくる。
何故ならば、岬に近づくにつれてエンカウント率上昇の一途を辿っているからだ。この分ではおそらく岬にはどれだけの魔物や魔獣がいるか分からない。そしてそんな場所に人魚が今も暮らしているとは思えないからだ。
期待のこもった目をしている人魚くんとは違って俺だけではなく、サラもシェリーさんも同様の不安を持っているのが窺える。もしもの場合、皆で慰めるしかないとアイコンタクトで伝えた。
こうして俺達はエリモ岬まで到着したのだ。岬の先端は切り立った断崖になっていた。そーっと崖下を覗くと海面が、そして透明度の高く海底まで見える。そこまで深くはないようだ。
「落ちたら痛そうね」
「今は干潮だけど、潮が満ちたら落ちても死なないかもしれないわね~」
かもしれないで落ちたくない。というか逆に考えれば干潮の今は落ちたら死ぬってことでは?
「大丈夫だよ、みんな行こう~」
それなりの高さに俺達がそーっと様子を見ているというのに、このお子様人魚くんは見覚えのある場所らしく何とも緊張感がない。
そしてそのままトコトコと先端まで歩いて行くと
ドッパーーーン!
「ウソ!? 落ちたーー!!」
派手に上がった水しぶきが立ち、唖然となった俺達とは打って変わって、下半身だけ魚形態になった人魚くんがスイ~と泳いでいた。
「こっちだよー、ここが洞窟になってるのー」
満面の笑みで手を振っている。そして俺達にも早く来いと言わんばかりの表情だが、ちょっと飛び降りる勇気はない。いや、それは勇気ではなく無謀というものだ。
「よかった、無事みたいだな」
「こらー!いきなり飛び降りたら心配するじゃない!」
無事だからよかったものの、俺達を驚かせた罰だ。後でたっぷりサラの説教をくらうがいい。
「でも、どうしようかしらね~」
そうなのだ。ここから飛び降りて人魚くんが無事だったのはきっと人魚補正でもあるのだろう。
「どこか降りられるところはないか探すか」
「そうね~」
俺達の方針は決まった。
「どこか他の道探すからちょっと待ってなさいよー!」
サラがまるでお母さんのように言って聞かせると、人魚くんも了承したようで手を挙げた。
その時だった。
「助けてー!」
洞窟があると思われるところからナメクジ色の細長い物体が数本伸びて来たかと思うと、人魚くんを捕まえ洞窟に引っ張り込もうとしていた。
バシャバシャと水音と水しぶきを立てながらもがく人魚くん。
「なんだありゃ!?」
「分からないわ、でも助けなきゃ!」
俺は手のひらに魔力を込め炎の塊を作ると長く伸びるその触手っぽい何かに思いっきり投げつける。
その横ではサラが如意棒を音速の勢いで伸ばし触手の一本を撃ち抜いた。
さらにその横ではシェリーさんが2連ボウガンを発射。その2本ともが別々の触手に命中しブチ切った。なんという命中率だ。
そして最後に俺の投げた炎の玉が長く伸びた触手を掠めることなく海水に触れ消えていった。
俺以外で3本の触手が切れたが、まだ3本程残っている触手に人魚くんが引きずられ俺達の視界から真下に消え崖下の洞窟へと入っていったのだ。
「だめ、ここからじゃ狙えない」
「角度的に無理がある。どこか降りる道を探さそう」
「そんな時間は無いわ!」
その場から飛び降りようとするサラを強引に止める。
「サラちゃん~、冷静になって~」
「そうだ、落ち着けサラ。サラが飛び降りても死んでは意味がない」
「そんなっ!?」
「それよりも降りれる道を探そう」
とてもじゃないがお昼のサスペンスドラマに出てくるような崖を飛び降りるのは無理。辺りを見回すが都合よく降りる道なんてものは見当たらない。
「でもっ!早くしないと!お願いっ!何でもするから、助けて!」
俺の耳に入って来たサラの言葉は脳が理解するより早く身体が反応していた。
「まかせろっ!」
つい勢いをつけて崖を飛び出した。
あんな事を女の子に言わせて動かないわけがない。だがこのまま落ちてはヤバイ。水深浅いし。
空中で崖に向けて左腕からライトウェポンを射出する。
パシュッという小気味いい音と共に射出されたそれは岸壁に噛みつき、落下の勢いを殺す。そこでシザーアンカーに再度操作し噛みついた部分を外して再度落下する。
バシャンと水しぶきを上げながら着水、周りを確認しながら海面を目指し泳ぎ出したが両腕のライトウェポンは重たいし防具は魔獣の革製だから金属程じゃないにしてもまともに泳げない。
ライトウェポンに魔力を込め、通常の3倍のパワーと速度で腕をかき回しなんとか海面に到着、息継ぎをする。
「ゲンスイさんーー!!」
「ゲンスイ君~~~」
二人の声が聞こえるが、正直あまり余裕が無い。ただ、俺が頑張って泳いでいるのは見えただろうからこのまま泳いで洞窟の中へと向かった。
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