第19話
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ベラスカの街に到着後、ギルドにて情報を収集するときフィアールギルドの手紙も役に立ち重要な情報を手に入れた。このベラスカの街から北東にあるハルムという漁村では人魚との交流があるらしい。というわけでベラスカの街は通過点となり、必要そうな旅の買い出しをすませ出発した。
ハルム村はベラスカの街から1日もあれば着くそうなのであまり苦労はしなかった。それは旅自体には苦労しなかったという意味でそれ以外の事で困った事は起こっていた。
「サラ、どうも俺の気のせいかもしれないんだが」
「どうしたの?」
今日も俺達は並んで御者台に座っている。目の前には街道が続いており少し磯の香りがしていたが景色はまだ林の中を突っ切るルートの為海は見えない。木々の間から木漏れ日が心地よいそんな景色からもう少し手前、俺達の手の先に視線を移した。
「パイオツカイデーとましゅまろ、何か思った以上に仲良くないか?」
そこには肩を並べて俺達の馬車を引く地竜がやたらとくっついて走る姿があった。
「仲良きことは美しきかな、っていうじゃない」
確かに俺達の地竜が仲違いして一緒の馬車を引かないなんてごねられたら俺達の旅はちょっと困る。だからいいのはいいのだ。ただ、その姿に俺は言いたい。
「リア充爆発しろ!!」
しかもだ。それをここ数日ず~~~~~と目の前で見せつけてくるんだ。いい加減なんとかしたいと思うだろ?
対してこちらはせっかくサラと一緒なのにこうして並んで座るだけで、お子様人魚がすぐ近くにいるから一緒にお風呂にも入れないし一緒に寝ることもできないんだ。
手綱を操って二匹を少し離すようにしようとしても全くいう事をきかないし。もうこれ手綱要らないんじゃね?と思うが、分かれ道なんかだとちゃんと指示に従うのだから一応いるのだろうと思いなおす。
ならば、手綱効果が無いわけじゃないはずなので思いっきりパイオツカイデーを右へましゅまろを左へ行くように指示だしをしてやる。
一瞬ピクッとした二匹は急に足並みを揃え、右へ左へ街道を蛇行しやがる。嫌がらせか?嫌がらせなのか??さらにスピードを上げて俺達は馬車に掴まっていることしかできなくなる。
「もう、何やってるのよー!」
「パイオツカイデー、止まれ!とまれ!」
急に馬車が左右に揺れ道なき場所まで通るから激しい振動を巻き起こす。サラからのクレームが俺に飛んでくるが、それは二匹に言うべきだろ?
地竜の反乱により我が軍は混乱の一途を辿っていたところに、
ガキンッ!
という音が後ろから聞こえたと思うと、激しい振動と共に馬車が止まった。
激しい振動という攻撃をリア充から受け、ムムムと唸りたいところだが、軍のトップが狼狽えては士気にかかわる。冷静に馬車を降り音がした場所を見ると右後ろの車輪が取れていた。
ヤラカシタ張本人である二匹に文句をつけるが、二匹ともにプイッっとされる。
地竜は賢いとはいえ所詮人語は話せないのだから仕方ないかもしれないが。と怒りを納めようとしたらサラが二匹に近づく。するとどうだろう。先ほどとは違って二匹ともすまなさそうにペコッペコッと頭を下げている。
「ほほう、我に喧嘩を売るとはいい度胸だ。パイオツカイデー、長い付き合いだから骨だけは拾ってやる!そこになおれっ!!」
俺がライトウェポン1号に魔力を込めながらパイオツカイデーに近づくと、向こうは向こうで器用に後ろ脚二本で立ち上がり、前足をフシュッフシュッとパンチの真似事で威嚇してやがる。
主従契約どうなった!?と思わないでもないが、彼の命は短いのだ。そんな細かいことは地竜ステーキを食べながら考えてもいいだろう。
「はいはい、そこまでよ。ゲンスイさんも子供みたいなことをしないの。もう!」
誰が子供か!と反論しようとした瞬間、「分かった?」と思いもしない殺気の効いた声に思わす首を縦に振るしかできなかった。
運がよかったなパイオツカイデー、今日は見逃してやる。
「それにしてもどうしようかしら」
俺とパイオツカイデーの最終戦争は回避されたものの、車輪が外れた問題は未解決である。取れた車輪を見てみると、軸になる金属部分の一部が無理な力が掛かったためかグンニョリと曲がりき列まで入っていた。
「変わりの車輪を木で作るしかないかな」
「そうね。でも急いだほうがよさそう、ここ狭いから他の馬車が来たら通れないわよ」
そうなのだ、こんな狭い道で蛇行していたのだから文句もつけたくなるだろ?とりあえず今は前方からも誰も来てないし後方からも来て……ん?
「なんだあれ?」
一瞬人影か?それとも魔獣か?と思ったがどうも違う。そしてそれはしばらくするとポコポコポコポコという妙な音を立てながら俺達の近くまで来た。
おそらくは竜人族であろう顔つきながらヘルメットみたいに見えるものを被りゴーグルをクイッと上げながらバイクのようなものに跨って後ろの泥除けに尻尾を乗せていた。満面の笑みで声を掛けて来た。
「お困りかしら~?」
そこには、上から下まで繋がっているピッチリタイトな革っぽい素材の服を着て、芳醇な果実だけは収まりきらなかったのだろう、胸元を大きく開けそれはきっと俺の事を誘っているのであろう事はもう火を見るより明らかで明白なのだからー
「こんにちは!僕ゲンスイと言います15歳です!お姉さんキレイですね!実はちょっと困ったことがあってお姉さんの助けが必要なんです。ちょうどそこに人目に付かない藪のような場所がありますのでよかったらこれからまずは親睦を深めませんか?ああ、心配しなくても大丈夫、お話するだけです!多少のスキンシップはあるかもしれませんがそれはあくまで合意の上での果実狩りだから安心してこれから…」
「ゲンスイさん?」
急に冷たい視線と殺気と怒気とプレッシャーを感じちらりと声の発生源を見ると血管が浮き出るほど顔が引きつったサラがゆっくり近づいて来ていた。
本能が叫ぶ。危険が危ないと。
「サラはん!違うんやー!これは獣人族としての本能で俺には抗えない呪いというかどないもでけへん事態で……」
「バカーーーッ!!」
絶叫と共に迸った閃光はサラの蹴りの軌跡だったのかもしれない、と俺は吹っ飛ばされかなり大きな木に当たってその勢いがとまり、地面に落ちた時に理解したのだった。
作者もゲンスイ君同様、むふふ展開なんて望んでないのだ。ホントだよ!
「本能のせいで体が勝手に動くことはある」
などと供述しておりさらなる取調が行われるようです。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
作者に愛を……




