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第16話

頭脳派脳筋は毎日更新継続中!

 街に辿り着いたのはいいが、何だかんだで結局もう夜中だ。

 救急病院のようにこんな時間でも診てくれる治療院はない。少なくともこの街には。それにもしそんな治療院があったとしても回復魔法でどうにもならないならばどうにもならない。

 そんな場合は通常薬師に診てもらうのだが、こちらも夜間は営業時間外だ。そしてこういう場合頼りになるのが冒険者ギルドだ。

 冒険者ギルドは仕事の斡旋や素材の買い取りなんかを主な業務内容としているが、斡旋する仕事の内容は多岐にわたり今回のようなファンタジー世界独特の問題も何か解決の糸口があったりするのだ。


「解決の糸口があるっていうから来てみたものの、誰もおらぬとは……」

 俺の頭の中の小さな俺に文句をつけた。


「他にあてはある?」

 救いを求めるサラの顔を見ると、無いという選択肢は無い。


「じゃあこっちだ!」

 俺は自信満々に見せかけて道を案内する。


 そして辿り着く。

「ここは?」


「我が家」


「………」


 救いを求めるサラの目はあんなに可愛かったのに、ものの十数分でこんなにも変わるものなのか。

「ジト目はやめて?痛いから。でもこんな夜中じゃみんな寝てるよ。取り合えず家で明日の朝まで休ませて様子を見よう」

 俺の精一杯の説明に理解を示してくれたようで。


 荷台をパイオツカイデーの宿舎に横付けしてサラの地竜アースドラゴンを休ませる。


 そして海水の塩分濃度を前世の記憶から引っ張り出す。蘇れ~!俺の海馬~!!

「確か海水の塩分濃度って3%くらいだったよね?」

 俺の記憶から引っ張り出してきた知識を披露する。


「この世界の海の塩分濃度が地球と一緒か分からないけど、3.3%~3.5%ってところね。さっき使った岩塩でこの浴槽の水から見て1%程度ってところかしら」


「もう少し塩分濃度を上げておくか。海水みたいにミネラルが豊富なわけじゃないけど、少しでも近づけた方がよさそうだしね」


 せっかく苦労してひねり出した俺の知識よりも詳しそうな事を言うので、きっとサラの方が正しいのだろうと思う。マイホームキッチンから岩塩を取ってきて目算で3%ちょっとくらいになるように岩塩を砕いて入れた。


 しばらくすると人の子供程のサイズもあるお魚さんは少し元気が出て来たような気がした。そして朝まで様子を見るという事でサラと二人、一つの毛布を持ってきて荷台の上で熱い夜を過ごしたのさ。


 途中念のため回復魔法を使ったりもしたが、サラと一緒に寝たという事実だけは揺るがない!!


 既成事実って大事。


 ムードの無い一夜だったのは仕方ないと思うんだ。




 翌朝、俺達はギルドまで来ていた。

「人魚いうとベラスカ地方の海で目撃されたなんて話は聞いたことがあるな」


 地図を見ながら冒険者の一人が説明してくれた。ベラスカ地方というのはここフィアールの街から北東にある。アインレーベ領とも隣接している地方だ。


「かなりの距離があるわよ?とても子供の足で移動できるような距離じゃないわ。それも人魚だったら尚更よ」

「だが実際にいるんだ。何かあったとしても海まで送り届けるとなるとベラスカまで行くしかない」


 浴槽の大きなお魚さんへに視線が集まる。朝一のギルドは結構人が集まるから視線の数は結構多い。


「なぁ、ホントにこれ人魚なのかよ?どこか湖の主って可能性はないのか?」

 サラの眉がぴくッと動く


「バカいうな。俺のサラが嘘をいうはずないだろうが!それに嘘をいう理由もなければメリットもない。本来ならば何をおいても恋人である俺に会いに来るのを優先するところをわざわざ時間をかけて保護したんだぞ!」

「ゲンスイはこう証言しているけど、その~、サラさん?はどうなの?」


 おい、それは俺のいう事が信用できないということか?ああん?いい度胸だ。表出ろ!!俺の戦術的パンチをお見舞いするぞぉ!


「ゲンスイさんのいう事は本当よ。最初に見た時は人族の子供の見た目だったわ。どんどん衰弱してこの見た目になったもの」


 戦術的パンチをお見舞いするまでもなく、サラの言葉はその場にいる全員に反論させないものだった。

「となるとベラスカ行は決定だな。ついでに何かクエストが無いか見てくるか。サラ、少し待っていてくれ」


 サラにお魚さんを見ておくようお願いして俺はギルドの中へと入り受付へと向かった。どうやらブラムおばさんしかいないようだ。今日はついてない、娘ちゃんがいれば目の保養になったのに。


「あらゲンスイ。やっと吹っ切れたのかい?あんた、モロとキューに感謝しときなよ?お前を元気づけるためだって女冒険者にお前を励ますよう声を掛けてたんだよ?」

 サラを待ち続ける数日の間にあいつらそんな事してたのか。しかし俺の所に来たのはシフォンちゃんだけだったよーな。


「励ますってなんだよ、まったく。まぁそんな事はいいんだが、ベラスカ地方に行こうと思うんだ。何かあっち方面でクエストはないか?」

 ブラムおばさんもなんか勘違いしてそうだが、話が進まないのでスルーだ。


「クエストは掲示板に貼りだされてるだろ?まったくあんたは一つも見ないでいつもここで済まそうとするんだから。そうだねぇ、傷心旅行ねぇ……」


「違うからな!?力もあり頭もよくそして理性の塊。さり気ない心遣いでレディのハートを射止める紳士ジェントルマンなんだからな!サラって恋人ができたの!」


 勘違いされたままなのも面倒なので昨夜からの出来事を一通り話した。結局いくら言っても信じてもらえなかったので結局表までブラムおばさんを連れて行きサラを紹介した。それでもどこか疑いの目をむけられた。何故だ。


「ウチの娘に手出したら許さないからね」

 何故だ。そんな話はしていない。


 結局ベラスカ方面でついでになりそうなクエストは無かった。しかしブラムおばさんが気を聞かせてくれてベラスカの街の冒険者ギルド宛に手紙を書いてくれた。

 ギルドで受ける事ができるサービスには変わりはないが、こういうのがあると一つ信用が上乗せされて得られる情報が変わることがあるので助かる。


 目的地は決まった。少々睡眠不足なところはあるがお魚さんの事を考えるとあまりゆっくりはしていられない。早々に旅に必要なものを買い込んで出発することにした。


この世界の人魚は本人の意思により何割人間で何割魚かを自由に変えられます。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

今後もよろしくお願いします。

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