エピローグ
寮に戻ってリオネルが真剣に私を見て、キスをした。
突然の行動に驚いているとリオネルが、
「俺は、ルカが恋愛感情で“好き”だ」
「……え?」
「ごめん。もう我慢できない。俺……“俺”が“俺”でいるためにルカがいないとダメなんだ」
「どういうこと?」
不安を覚えるその言葉にリオネルが、
「ずっと前から俺、本当は、“魔王”の“呪い”に感染していたんだ。でもそれが言えなくて。……ただ、ルカが俺のそばにいるとどういうわけか収まるみたいだったんだ」
「そ、そんな話始めて聞いたよ」
「うん、今日初めてしたから。そしてここまで追いかけてきていたからずっと大丈夫だったんだけれど、今日は、あの、魔王候補の……あれの影響で俺……うまく抑えられなくて」
「わ、分かった、私の特殊能力で抑えるから」
「無理だよ。さっきやって駄目だったのは分かっただろう?」
そうリオネルが私を……熱っぽい目で見ながら言う。
でもだったら、一体私はどうすればいいのだろう、そう私が思っているとリオネルが、
「でもおれ、この“呪い”で気づいたことがあるんだ」
「な、何が?」
「俺はルカが好きだ。そう、好きだから一緒にいて、その感情があるからどうにか抑えられた気がするんだ」
「で、でもそれなら今は……」
「今だって俺はルカが好きだ。そしてキスしたらそれが消えていく。俺、ルカがいないとダメなんだ」
リオネルに言われて私は、リオネルに甘い私は悩んで、そして、
「おお付き合いからよろしくお願いします」
そう返したのだった。
そしてその日は泥のように眠って次の日。
リオネルに特に変わったところはなく、私は安堵すると共に、もう大丈夫そうだと思って私はリオネルに、
「魔王の呪いの話は秘密にしておくよ?」
「……うん、そうしてもらえると助かる。それで、ルカ」
「何?」
「もう一回させていただいてもよろしいでしょうか」
朝から盛ろうとしたリオネルと戦い、今回は私が勝利をする。
それから昨日のあの私の力は、ダンジョン内の特殊な出来事といった話になった。
また、スール達は無事であったのもよかったように思う。
それに、セレンやクロス達は私達のことは話さずにいたようにいたようだった。
お礼を言うと、こちらも秘密があるからといった答えと、クロスのそばに一sぃょにいて嬉しそうなセレンが、
「今回の件でクロスと一緒にいてもいいってことになったんです」
「……傍で守らないといけないと思ったからな」
照れたようにクロスがそう答えていた。
また、それからリオネルの兄に呼び出され、クラウドとイリスさんに今回の顛末……リオネルの魔王に関する話は抜いてお話しすることに。
また魔王候補の仲間を捕らえられたとのことでこれから情報を引き出すらしい。
そのセレンたちの里の人間からも話を聞くことになりそうだといった話も聞く。
そして、
「実は今回のですべてが片付いていないようなんだよな。これからもよろしく」
まだしばらく私は最弱でいられるのか不安な学園生活を送りそうだと気付く。
でも前と違うのはリオネルとその私が……。
そう思っているとイリスさんが、
「ルカ」
「はい。なんでしょう?」
「リオネルと“恋人になった”のですか?」
私はそれ以上何も言えず絶句しているとリオネルが、
「ルカは俺のものになりました」
「そうですか。ようやくですか。おめでとうございます」
そう淡々と言われてしまった私はそれ以上何も言えず……。
それから普通に、学園内の授業を受けたりといった日々が始まる。
だが、スールはまだ学園のアイドルをあきらめていなかったり、他にもいろいろとあって。
騒がしい、私の最弱なはずの学園生活はまだ続いていくようだった。
ルカと一緒の日々はとても楽しい。
だからリオネルは自分が“魔王”に反転していないのだと気付いていた。
血の中に潜む、それがあの魔王の最後の言葉だと今のリオネルならわかる。
かつて魔王候補という“下種のようなもの”にさらわれて贄にされそうだった時……それでもリオネルは、まだ、自分がそちら側に行きたくないと願った。
たまたま持っていたお守りの道具にただひたすらに絶望を感じながら願ったそれは、リオネルにとって何よりも魅力的な存在だった。
「ルカがいるから。俺は今の俺なんだ」
「? 今何か言った?」
大切なルカが不思議そうにそう聞き返してきたので、何でもないとリオネルは答える。
昔からこの可愛い幼馴染はずっとリオネルを守ってくれていて、それもまたリオネルには愛おしい。
ルカはリオネルが魔王になるのを望まない、それは幼馴染として生きてきたリオネルは断言できる。
ルカがそばにいる限りリオネルは、魔王にならない。
だって、笑顔のルカ以上に欲しいものは……今のリオネルには、何一つとしてないのだから。
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