効果
範囲選択は、ここのダンジョン内周辺。
小さな音がして、先ほど現れた彼らの作り出した魔物に体力と魔力、それとどう負った攻撃に弱いかなどが描かれた光の板が現れる。
現実がゲームになったような様相だが、それもそのはず。
私はこの周囲一帯を“ゲーム”のような空間になるように設定した。
そのうちの一つの効果がこれ。
そしてもう一つの効果が、
「あそこに書いてある数字がゼロになるまで魔法などで攻撃すれば魔物といった“敵”は倒れるから。設定時間は今日一日。仲間と思われる人間には攻撃はあらないし怪我もしない。あ、こちらの体力がゼロになると気絶して動けなくなるから気を付けてね。もっとも、“死ぬこと”は出来ないから、安心していいよ」
「何を……言っているんだ?」
そう告げると、クロスは気味の悪いものを見たかのように私にそう告げる。
いつもこれをするとこんな風に見られるんだよなと思いつつ私は、
「このことは私がやったって秘密にしてもらえるかな?」
「……俺たちが“いばら姫”や“いばら姫の騎士”だと知られて、記憶が消せない以上こちらもそう簡単には、他の人間に話せない。それに……一応お前たちは恩人だからな」
「そう言ってもらえると助かるよ。じゃあ後はお任せするね。リオネルを何とかしないと……」
私が苦しそうなリオネルに肩を貸しながらそう返すと、クロスが、
「あともう一つだけ聞きたい。これはいったい何なんだ?」
「……この周辺の“空間”を“再設定”したんだ。つまりは“空間支配”だね」
「空間……支配……」
「そう、だからこの空間内の“情報”も読み取れるし、“再設定”も可能」
「だが、なんだこの、“再設定”? は。能力が見えたり……」
「私のいた世界の“概念”、つまり、“異界”の……娯楽? かな。それに“ゲーム”というものがあってね。それがこんな風な感じなんだ。私にとって都合がいいからそう設定した形かな」
「……こんな風な技を使っていいのか?」
「問題ないよ。今日はこのダンジョンには特に魔力が流れているからね」
「それのせいにすると」
「そういう事だよ。じゃあまた後で」
そこまで説明してから私は歩き出す。
リオネルがさらに苦しそうだったから。
私の力があまり効いていないみたいだったけれど、これが魔王の“呪い”に関するものなら、そう誰にも話せるものじゃない。
でないと弱っている今だから……といった話にもなりかねない。
「とりあえず寮で処置して、様子を見よう。それから……もし聞かれても大丈夫な受け答えを考えないと」
「……助かる」
「リオネルは私の大切な“幼馴染”だからね。絶対に守るんだ」
私がそう宣言して連れていくと、リオネルがいつもと違った声音で、
「……うん、決めた」
「? どうしたの?」
「……」
けれど私の言葉にリオネルは答えない。
そして私はリオネルをどうにか寮の私達の部屋まで連れて帰ったのだった。
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