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特殊能力(チート)を使った

 小さな短剣だけれど、これで戦うのならば十分だ。

 だって私が本当に得意なのは“剣”なのだから。

 強い力を使う時はやはり実態のあるものを手にした方がいいと私は知っている。

 それでも普通で、平穏な学園生活が送れるならと気づきにくい魔法の方を選んだのだ。


 そしてもともと私は、魔法で攻撃して、もしもの時に剣でという形にしていた。

 そっと持っていた短剣に魔力を通して攻撃に移る。

 私の様子が変わったのに気づいたのか、炎などの魔法で攻撃をしてくる“失敗”だが、それらを剣で消し去ってそのまま攻撃をふるうも、わずかにかすっただけだった。


 もともとが剣士の肉体だからそういったものを避けたりするのに慣れているのかもしれない。

 そこそこ強い剣士であればすでにこと切れているだろうけれど、リオネルに振り回されたり、魔王候補と遭遇戦を幾度となくしたり色々した私はすでに、常人のレベルではない。

 そう思ってさらに攻撃を繰り返した所で、


「ぐぅうっ」


 呻くようにその“失敗”は動くのを止める。

 見るとクロスの剣が、彼の足に刺さっていた。

 “失敗”は意外に私の攻撃に、いっぱいいっぱいであったらしい。


 また、このまま自分も含めて天井を壊して生き埋めになるのを避けるだけの“知能”がこの“失敗”にはあるようだった。

 だがそれがあることは……そう思いつつさらに攻撃を加えていく。

 なかなかしぶとい。


 速く倒してリオネルを……そう思っていると再び炎の魔法や雷の魔法といった援護がある。

 それも私が攻撃しやすいようにタイミングを合わせて。

 それをしたのが倒れ掛かっているリオネルだと気付いた。


 リオネルに無理をさせてしまった、そう思った瞬間私の体は前以上に速く動く。

 怒りが原動力になっているのかもしれない。

 そこで、私はとどめを刺すべく縦に大きく短剣を振り下ろした。


「ぐぁああああっ……魔王様……復活を……」


 そう呟きながら倒れたその“失敗”から黒い光があふれて、やがてあのキズヤと一緒にいた名も知らぬ人物の体になる。

 と、セレンを守るようにしていたクロス達のの方から白い光が走って、キズヤとその、先ほど変質した仲間に向かっていき、白い光に包まれる。

 そこから回復魔法に似た何かを私は感じ取った。


 どうやらセレンの能力がそう言った形で名折れ込み自動的に回復しているようだった。

 ただこれで魔王候補の、魔王化は“失敗”に終わる。

 あとは一緒にいたもう一人の仲間だが、現在逃げていく最中だった。

 

 出来れば彼を捕らえたいが、今はこの二人とそして、倒れこんだリオネルをどうにかする方が先だった。

 私は逃げていくその魔王候補の仲間は放置してリオネルのそばに行くと、リオネルが私に抱きつく。


「ごめん、今回は少ししか手伝えなかった……」

「いいよ。“呪い”、大丈夫? このまま、“魔王”になったりしない?」


 私が不安を覚えて抱きしめたリオネルに聞くと、リオネルは少し黙ってから、


「後で……ルカに手伝ってほしいんだ。そうすれば多分……大丈夫……」

「分かった。私に出来ることなら何でもする」


 そう、私がリオネルを守るんだ、そう思って告げるとリオネルが小さく笑うのが聞こえた。


「本当に……ルカは、“俺に甘い”な」

「……大事な幼馴染だから」

「“幼馴染”の壁は、大きいな……好意は分かっているのに」


 ポツリとさみしそうにリオネルが呟く。

 それはどういう意味だ、そう思って告げるとそこで回りで悲鳴が聞こえる。

 魔物が出た、沢山、といった声も聞こえる。


 そこで私は気づいた。


「あいつ、逃げる時に魔物を放ったんじゃ……しかも私達には強力な魔物をとりあえず押し付ける、か」


 現れたそれは、セレンを襲おうとしたあの森にいた魔物だ。

 セレンが小さく悲鳴を上げるのを聞きながら私は、


「魔王候補がよく作る魔物。そういえばセレンは見たことがあったんだっけ……裏で取引をしているように見せかけて、その実いつでもセレンを襲って奪おうと考えていたらしい。彼らのやりそうなことだね。でも今はあまり相手にしたくない。そしてここにいるのは学生ばかりで戦う能力には疑問。そして私はリオネルを早く連れ帰って様子を見たいし休ませたい。あとの状況説明はクロス達に頼んでいいかな? それ以外は、怪我人が誰も出ないように私の方でしておくから」


 そこで問いかけるとクロスが、


「かまわないが、どうするつもりだ?」

「こうする」


 そう私が答え、私の……特殊能力チートを使ったのだった。


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