はったりだったのか?
勝利を確信し、饒舌になっているのか、魔王候補の彼は私達にそう語る。
どうやらクロスがここに来ること自体が罠であったらしい。
それを聞きながら私は、地面を見る。
周りに散らばる道具の配置ちお、この洞窟内の魔力の形を見て、
「完全に、魔王候補の人達の勢力範囲内だね」
「おや、分かるのかな?」
「うん、だって君達が使う魔法はいつも大体同じ形だからね。……それが魔王となるために必要なものだから、同じような形になるのだろうけれど」
そう告げると、魔王候補はいぶかしげな顔で私を見た。
次に周りを見回してから、
「どうしてお前はこの魔王になるための魔法を知っている?」
「何度も見たことがあるからね」
「……はったりだ」
「そう思うならそれでいいよ」
「……だが、すでにクロスがその範囲に入っているのにも気づいたようだな。あのリオネルとかいう男も」
「そうだね。リオネルを巻き込んだ君を私は、許さないよ」
そう答えるとその魔王候補は、
「そんなにお気に入りで執着しているのに、“友達”だと? どこからどう見ても“恋人”にしか見えないな」
「……君の目にはそういう風にしか見えないだけだよ。それと、クロス、今は下手に動かない方がいいよ。そのあたりには、逃げ出そうとしたり、もしくは周囲に攻撃をすると自分に返ってくる罠があるから」
かすかな魔力の動きで私はそれを読み取った。
クロスが周りを見回してそこで呻く。
どうやらようやく気付いたらしい。
でもこの程度ならクロスくらいの能力があれば気づけそうだけれど、閉鎖的な里はある意味で平和で、平和ボケしている部分があるのかもしれないと私は思う。
もっともこのような状況に陥った私も、この学園に来て平和ボケしかけていたのかもしれないが。
そう私が思っていると魔王候補が私に、
「あのクラウド王子殿下が潜入させた“密偵”か何かか?」
「違うよ。でも、こうなったら私も……あれを使わないといけないかな」
そう告げて笑ってやる。
仕掛けた罠に気づき、その罠の効果やどういったものかを知っていて、更に私はこうやって笑う。
その余裕が怖いのだろうと私は思う。
油断はしないようにしないといけないけれど、本音を言うと私はこの能力をあまり使いたくない。
出来れば“派生”程度で済ませたいし、他の人にこの能力をできる限り“説明”したくない。
何故ならこの魔法はとても恐ろしいものだからだ。
それを私は自覚している。
だからこうやって気をそらした所で、
「“聖炎の剣”」
私は魔法を使った。
出来れば油断を誘って攻撃という形にして、倒せれば楽だけれど、
「……この攻撃のためのはったりだったのか? つまらないな」
「残念です。これでどうにかなれば私もよかったのですが、仕方がありませんね」
「御託は良い。もう、“いばら姫”を“贄”として……“儀式”を開始する!」
魔王候補が宣言し、足元に光が線状にいくつも走る。
いつものあれか。
リオネルが“贄”と間違える前に手を打とうと私が特殊能力を使おうとした所で、
「うう!」
「リオネル!?」
そこで、リオネルが突然、うめき声をあげて倒れこむ。
同時に、私が抱きしめていたセレンと、そしてリオネルのそばにいたクロスも倒れこもうとする。
それだけではない。
「なん……だ……これは」
そこで魔王候補が、何かを感じ取ったらしくそう呟いたのだった。
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