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もったいぶった言い回しで

 貫かれたキズヤの体が、まるで人形のように倒れていく。

 これくらいならまだすぐに回復魔法を施せば何とか間に合うだろう。

 けれど今はそんな余裕があるのか?


 実際の敵はそのすぐそばにいる仲間で、キズヤは操り人形だった。

 それも本人と気づかずにいるような。

 そう私が思っているとそこで、


「ふう、まったく、“馬鹿”の扱いは意外に大変ですね。能無しのくせに、プライドだけは高い……まあ適当におだてておけば勝手に踊りますから、そのあたりは楽でしたが」

「……相変わらず、人を人のように思っていないね」


 私がそう告げると、目の前の彼は、


「君は私達のことを知っているのかな?」

「魔王候補でしょう? 私は君達のような人達が、大嫌いなんだ」

「……我々と出会って生きていられるとは……運のいい人だ。……見た目も可愛らしいから、君はそちらの“いばら姫”と一緒に“飼って”あげてもいいよ?」

「お断りです。虫唾が走る。そして私は可愛くない、むしろ格好いいはずだ」


 そういい返しておく。

 まったくリオネルといい平凡な私をどうして可愛いというんだ。

 そう思っているとそこで、


「そう思っているのは貴方だけでしょう」

「その言葉、後悔させてやる」


 私はこいつ、絶対許さないと闘志に燃えているとそこでリオネルが、


「ルカは俺のだ。お前なんかに渡さないぞ!」

「……なるほど、“恋人”か。……魔力も強そうだから彼も“生贄”として捕まえるのもいいかもしれませんね。目の前で“恋人”を殺される、という趣向はいかがですか?」


 笑いながらリオネルを見る彼に私は、酷く怒りを感じて、


「リオネルに手を出したら許さない。あと、リオネルは私の“恋人”じゃない、“友達”だよ」

「そうなのですか?  彼はそんなつもりではないような気がしますが。わざわざ“友達”のためにこんな危険な場所まで追いかけてくると?」

「私もリオネルも強いからね。君達、魔王候補なんて愛玩動物程度の存在だからね」


 そう返してやると、魔王候補の彼は沈黙した。

 すぐそばにいたもう一人の仲間が慌てているように見えたが、関係ない。

 そこで深々と魔王候補は嘆息した。


「その余裕めいた言葉を後で後悔するでしょう。そもそも“いばら姫”を守る里というからにはさぞかし……と思っていたのですがプライドが高いだけで弱い者の集まりで……簡単に騙せてしまい手ごたえがありませんでしたね」


 ふうっ、と嘆息するもう候補にそこでクロスが、


「お前があいつ、キズヤと時々あっていたフードの男か?」

「そういえば、誰かが見ているのも感じましたね。こちらの様子を見せてどう動くかも見ていたのですが……まさか、“いばら姫”を囮として使おうと考えるとは思いませんでした。愚かでこちらには都合がよかったですね」


 嗤う彼にクロスがとびかかろうとするとそこでさらにその魔王候補は続ける。


「“いばら姫の騎士”は“いばら姫”の居場所がどこにいるのかが分かるのでしょう? それを逆手にとって、おびき寄せる。あまりにもうまくいきすぎて笑いが止まりません。自分たちが隠せていると思っている鍵のありかすらも、我々にとっては見える場所に飾ってあるとしか思えないのですから」


 もったいぶった言い回しで、クロスも罠にはまったのだと魔王候補の彼は私達に告げたのだった。


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