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騙した

 挑発して、このキズヤの能力をもう少し知ろうという私の作戦は上手くいったようだった。

 怒りに震えたキズヤは今度は剣のようなものを取り出して、それに炎をまとわせる。

 一応は強い方の部類に入る魔法の一種だなと思いながら、ためらいもなく私に向かって振り下ろされるそれに私は、魔力で作った剣で応戦する。


 キンと乾いた音がなって、キズヤの剣が真っ二つになり刃先がすぐそばの壁に突き刺さる。

 はらりとキズヤの前髪が、先ほど私が剣をふるった際に切れたらしく落ちていく。

 大きく目を見開いたキズヤが私を見ている。


 そういえば彼は剣士科の方だったか?

 それも学年で~といった自慢をしていた気がする。

 けれど私は、剣の方も“得意”だ。

 

 得意となってしまった状況に、リオネルに追い込まれたと言えるかもしれないけれど。

 そのかいがあってか私は一瞬で彼の剣を打ち払うことが出来た。

 まるで止まっているような剣の動きなので私は容易であったのだけれど、


「ば、馬鹿な……俺の剣戟をどうにか出来るのはクロスくらいのもの……」

「世の中には君よりももっと化け物じみた人間が沢山いるんだよ。私も逃げ出したくなるような人だっているしね」


 そう冗談めかして告げるとキズヤがぎりっと歯ぎしりをして、


「……分かった。もういい。全力で……今までの言葉を後悔するような死に方を教えてやる」

「その割には手ぬるいね」

「苦しまずに殺してやろうと思ったんだがなぁ」

「そういった“遊び”をすぐにしようとするのが君たちの悪い癖だね。でもその方が私には都合がいいけれど」


 そう私が答えるとキズヤが、


「誰か助けを待っているのか? 先ほどの場所に近いとはいえ、そんな簡単には追跡できないぞ?」

「うーん、いざとなったら私が自力で脱出するけれど……もう一つ私達にも目的があるんだよね」

「へぇ、どんなだ?」

「君たちの捕縛も出来ればなって」


 そう私が言うと、キズヤがさっと顔色を変えて、


「……すぐに準備をしろ。こいつはわざと攫われて、この場所を……」


 などと傍にいた仲間に伝える。

 けれどその仲間の一人は、


「問題ありません。こちらにとっても“時間稼ぎ”ですから」

「なんだと? お前。どういう意味だ?」

「そのままの意味です」


 淡々と答える彼。

 影の薄い男。

 違和感の正体に私は気づいた。


 あまりにも存在感がなさすぎる。

 常人であればあるようなそれがこの人物たちにはない。

 そこでキズヤが、


「だが“時間稼ぎ”だと? わざわざこんな近くに転移するように仕向けたのも、あのクロスの“転移魔法”ではこの距離の洞くつでは使いにくいだろうと、そういった理由で……」

「徒歩での移動の方が彼らの行動を制限しやすいですから。それに、あのクロスという人物がいなければ“いばら姫”の能力は解放できないのでしょう?」

「それはそうだが、“いばら姫”さえいれば俺は魔王に……」

「ああ、そんな話もありましたね」


 キズヤの仲間らしき人物がそう答えた。

 やはり、そう私が思った瞬間に、壁の一角が壊される。

 どうやら元々出入り口になっていたらしい場所を似た色の岩で薄く蓋をしていたようだった。


 現れたのはクロスとリオネル。

 そしてそれを見てキズヤが、


「どうしてこんな……まさか、お前騙し……」

「貴方のような“小物”が“魔王”になれるわけないでしょう」


 その仲間に一人につかみかかってそう告げると、彼の仲間はそう告げ、同時にキズヤの体に何かが突き刺さったのだった。


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