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私は強いよ?

 呼び出された魔物。

 たったの五頭で自慢げだ。

 本当に彼は、自分が魔王候補になれると思っているのだろうか?


 しかも、傍にいる彼の仲間に命令しているあたり、自分の力を使っていないように見える。

 嫌な予感がした。

 彼らは自分の目的のために誰かを傷つけ“騙す”事も厭わない。


 そう思っているうちにまるですでに勝利したかのような笑みを浮かべて、


「さあ、五体も一気に攻撃されてはさすがのお前も……!」


 何かを言い終わる前に私は、その魔物五体を灰に変えてしまう。

 それをしながら、私は奇妙な感覚を覚えていた。

 確かに魔王候補は魔物を操れるけれど、それよりももっと恐ろしい魔物、以前森でセレンが襲われたようなあれを呼び出しても構わないのだ。


 まだ目の前のこのキズヤという人物は私を侮っているからなのかどうかは分からないが、あまりにも攻撃が安直すぎる。

 そしてすぐそばに付き従うように存在する二人。

 その人間たちはセレンは知らないようだったので同郷の人間ではないのだろう。


 セレンのいた里はかなり閉鎖的な場所だったようだ。

 そんな場所で一体どのように魔王候補になる方法を……とは思う。

 外部にそこそこ出る機会のある人物だったのだろうか? 


 そう思いながら私は傷やを睨みつけると、不愉快そうに、


「なんだ、こんな魔物五体で倒せないのか。こいつ、一体なんだ? 成績上位者じゃないだろう? なのにこんなのが紛れ込んでいるなんて……こちらの動きを読んで、わざわざ潜入させていたどこかの勢力か?」

「違うよ。私はたまたま居合わせただけ。本当は普通の学園生活を送りたかったけれど、君たちのせいでそれは無理になってしまった。その責任……憂さ晴らしもかねて君たちには痛い思いをしてもらおうかな」


 冗談めかして私が告げると、キズヤが笑う。


「だったら首を突っ込まなければいい。今すぐそこの“いばら姫”を置いて逃げ出せばいい。俺が欲しいのはそいつだけだから見逃してやるぞ?」

「セレンだよ」

「何がだ?」

「セレン。この子は“いばら姫”ではなくて私の友人の“セレン”なんだ。だから、“友人”は守る主義なんだ」


 そう返すとキズヤが嗤う。


「“友人”? そんなもののために命を懸けるのか? 自分の命を?」

「……どうも君は勘違いをしているように感じるね」


 そこで私はそう返してやる。

 その言葉はキズヤの癇に障ったらしい。

 苛立ったように彼は、


「何が勘違いだ? 一体この状況で、どうして自分が無事でいられると思うんだ?」

「君こそ、今の状況でどうして私が危機感を覚えると思う? 先ほどのたかが……あの程度の魔物をけしかけるしかない君を私が、あの魔物を一瞬にして倒せた私が、君を脅威に思うと思うかな?」

「なんだと? ! あの程度が俺の力だと思うなよ!」

「どうだろうね。ほかに君はどんなことが出来るのかな? そして今のうちに言っておくけれど私は強いよ? 魔王候補君?」


 皮肉を込めてそう告げると、キズヤが激高したようだった。


「先ほどから何度も何度も……この俺を馬鹿にしやがってぇぇぇ」


 そうキズヤが叫ぶのを私は静かに見ていたのだった。


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