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“弱虫”

 目の前に現れてけしかけられた魔物。

 それを私は一瞬にして燃やし尽くした。

 この程度の魔物は余裕だと私は思いながら、驚いたようなキズヤと仲間たちを見て、


「それで、この程度の魔物で私をどうにか出来るとでも?」

「この……こんな学生がいるなんて聞いていないぞ。上位にはいなかったはずだ!」


 キズヤが焦ったようにそう叫んでいるが、そういえば私、最弱、Fランクだったなと思いだした。

 やはり私の判断は間違っていなかった、こうやって敵を油断させるのに成功した! と、当初の目的を忘れて私は心の中でドヤァ、とした。

 だがそこでキズヤが怒り狂ったように、


「あの魔物は欠陥品だ。もっと呼び寄せろ!」

「しかしキズヤ様、それではこの後の……」

「“宴”か? そんなもの、俺が“魔王”になってしまえばその力でどうとでもなるだろう! それともお前達、俺の寝首をかいて自分が“魔王”になる気か? ……魔王は二人もいらないからな」


 キズヤがケタケタケタと不気味な笑い声をあげる。

 常人がしないようなその様相も、魔王候補にはよくある特徴だ。

 “闇の魔力”に触れると、“正気”を保つのは難しいのかもしれない。


 ただ以前、“大切なもの”があったがために、一度だけ魔王候補の一人が元に戻れたこともある。

 深入りをまだしていなかったから、という事もあるが……彼のもたらしてくれた情報から、魔王候補と呼ばれる者たちの情報がこちらにそこそこ流れたことがあったとふと思い出す。

 けれどそういった“大切なもの”があることがまず魔王候補にしては珍しいのだ。


 このキズヤを見てわかるだろう。

 彼は……誰でもいいのだ。

 “使える道具のような人間”さえいれば。


 その冷酷さが彼自身を傷つけることになるとは思っていないのだろうと私は思う。

 そこで再び先ほどの魔物が再び五匹ほど現れる。

 学習能力がないと私は嘆息した。


 するとセレンが、


「あ、あのすみません。私もお手伝いを……」

「しなくていいよ。この程度、私にとって“敵”ですらないから」

「ルカ……」

「ごめんね。本当はクロスに助けてもらいたかったかなって思うけれど、私、この魔王候補と名乗る連中が“大嫌い”なんだ」

「! そ、そんなことはないです。でも、“大嫌い”?」

「何かとても嫌なことが?」

「魔王候補は、すぐリオネルを殺して“生贄”にしようとするから嫌いだ」


 きっぱりと答えると、それにセレンが少し黙ってから、


「ルカはリオネルが大好きなんですね」

「……そうだよ。昔からずっと、“私”が守り続けてきた大切な幼馴染なんだ。……ここで逃がせば、狙いを変えてくるかもしれない。それにセレンは私の友人だからね。自分の手の届く範囲の人達は私は、“守る”と決めているんだ。それだけの力が今の私にはあるから」

「……ルカ、最弱のふりしても無駄な気がします」

「……私だって劣等生になるために頑張っているのにね」


 そうセレンに答えているとそこでキズヤが、


「こんなところで穏やかにお話とは、余裕だな」

「だってさっきの魔物が幾ら増えた所で私の敵ではないからね」

「はったりだ」

「そう思うなら試してみればいい。魔王候補なんていう、自分の力だけで強くなれない“弱虫”に私は負けない」

「この……いい気になるなよ! お前達!」


 私の挑発に激高したらしいキズヤがの命令で傍にいた仲間が、先ほどの魔物を五頭ほど呼び出したのだった。


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