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私の判断ミスだ

 目的の場所にはすでにキズヤと他数名が来ていた。

 セレンはキズヤ以外を見て、


「……知らない人たちと一緒?」


 そう小さく呟く

 となると、“いばら姫”といった同郷の人達じゃないのかと私は気づいた。

 同時に彼らが“敵”になるのだろうかと気づく。


 警戒しておこうと思っているとそこでキズヤが微笑み、


「セレン、約束通り見に来てくれたのか」

「約束通り?」


 そこで不思議そうにリオネルが呟くので、私が小さく、


「昨日、今日ここで会いたいと言われていたんだセレンは。キズヤに」

「俺は聞いていないぞ。それに彼は……」


 リオネルがそう呟いた所で、セレンがそちらに行こうとしたから私はついていく。

 すると過ぎに私はリオネルに手首をつかまれた。


「何?」

「……油断はするな」

「分かっているよ。何ならリオネルも一緒に来る?」

「……少し離れて、周りの状況を見ている。何かあったらすぐに手助けする。……二人一緒にいて巻き込まれても困るから」

「うん」


 そう答えて私はセレンに向かって走っていく。

 するとキズヤが眉を寄せた。


「君は誰ですか?」

「セレンの友人です。心配なのでついてきました」

「なるほど。……セレンは良い友人をお持ちのようだ」


 そういうもキズヤは特に動こうとする様子もない。

 周りにも魔力の反応はない……と思う。

 このダンジョン自体が魔力を含んだ壁などに構成されているがために、一体化して魔法が“隠れる”場合があったり、自然の魔力発動場所(穴が突然開いたり、天井からとがった鍾乳石のようなものが落ちてきたり、炎が突然沸くなどの魔法が使われたような動きが自然と起こる)があり、それをまた逆に利用する場合もあるのだけれど……そんな都合よく存在してはいない。


 しかも引き起こされるのは、こういった学生用のものでは、大抵、ちょっとした魔法攻撃程度のものなので怖くはないはずだった。

 けれど奇妙な胸騒ぎを覚えるのは何故だろうと私は思う。

 何か魔力の痕跡を見落としていたりするのだろうか?


 そう私が思っているとそこで、


「おーい、スール」

「あ、シヴァン、どうしたの?」


 スールの恋人のエルフ、シヴァンが現れた。

 どうやら彼もこの洞窟に用があったらしいのだけれどそこで、


「今日は一年に一度、このダンジョン内に魔力が満ちる日なんだ。その日は壁などに魔力が走って、洞窟内も少し変わった動きをするらしい」

「そうだったんだ」

「といっても学生が危機に陥るような危険な現象はこれまでに観測されていないから、そのまま演習にいつも使っているんだ。ちなみに今日はその満ちた魔力の……」


 といった話をシヴァンがするのを聞きながら、私はさらに嫌な予感がする。

 一年に一度の魔力が満ちる日。

 何かをするのに、それを使わない手はないのでは?


 私はセレンの手を握り、今すぐここから離れよう、そう思ってすぐのことだった。


「勘が鋭いな」


 キズヤがそう言って笑う。

 同時に洞窟の周囲の壁が突然青く光りだす。

 魔力が光に変換されて一部が現れているのだろう。


 それに一瞬意識がそれてしまった私がいけなかったのかもしれない。


「“解放せよ”」


 そのキズヤの呟きと共に、私の足元で、否、セレンの足元で光の魔法陣が現れる。

 そこから引っ張り出す時間はない。

 私の判断ミスだ。


 瞬時にそう考えた私は、即座にその魔方陣の中に自ら飛び込み、セレンを守るように抱きしめて……そのまま、セレンと一緒に何処かに飛ばされてしまったのだった。


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