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試験を受けに行きました-5

 私の必死のお願いを、幼馴染のリオネルは全く聞いてくれる様子はなかった。

 リオネルは強引すぎる。やはり、


「転移魔法で、リオネルだけお城に転送しようか」

「……そんな事をしたら、どうなるのか分かっているのか? ルカ」


 私がこれからの学園の絶望を感じながら、そういった決意をしようとしているとリオネルが、そんな風に言ってくる。

 どうなるのか? とリオネルは言っているが、今までの経験上、


「私のおやつが横取りされる?」

「……そういえばそんな事もしたな」

「私が読みたがっていたこの世界の本を、カバーだけ入れ替えて、えっちな本に変えたり?」

「……あれは、キスシーンまでだったぞ」

「子供の頃はキスシーンだけでも凄くえっちな事だって思っていたんです! それを、それを……楽しんでいた冒険ものの小説をそんな恋愛ものにしやがって。しかもメイドのリサさんに見られて、ルカちゃんはおませなのね~、と笑われたんだよ! あんな恥ずかしい思いをしたことはなかった」

「……うん、悪い事をしたな」

「他にも私が筋肉ムキムキマッチョになって、しかもリオネルの背を追い越してやるぞってダンベルを振ったりしてがんばっていたら、ダンベルがどこかに消えるし、リオネルは私の頭を一生懸命抑えるし……おかげで私よりもリオネルの方が背が高い……」

「あー、えっと、多分俺がやらなくても普通にルカは背が伸びなかったんじゃないかな」

「……嘘だ。思い出したら腹が立ってきた。このままリオネルを城に転送してやる、うごっ」


 そこで私の頭を何者かがつかんだ。

 正確にはリオネルが私の頭を掴んだわけだが、そのままぐいぐいと地面の方に押し、


「小さくな~れ、小さくな~れ」

「や、やめて、私に呪いの言葉を吐かないで、というか私もっと背が伸びたいよ。そして背の高い美人なお姉さんになるんだ!」

「小さくな~れ、小さくな~れ。そして、城に俺を転送したならルカの身長はこのまま止まってしまうだろう~」

「ふ、不吉な事をいわないでぇええ」

「嫌なら、転送しようとは考えない事だな」

「……眠っている間にこっそり、リオネルを送り返せないかな?」


 私は恨めしくなって呟くと、リオネルが、


「仕方がない。俺も転送魔法を覚えるか」

「転送魔法は特殊能力チートの一つだよ。元々持っていなければ覚えられないよ?」

「うーん、こう見えても勇者の末裔だしがんばればなんとかなるんじゃないのか? 愛する幼馴染に会いに、とか」

「その愛する幼馴染が平凡な魔法学園生活を望んでいるのに、ぶち壊そうとするような鬼畜な所業をしているのは一体誰だろうね」

「誰だろうな~、あ、所で今日の夕食はどうする? 実はこの辺り観光業にも力を入れているらしくてガイドブックが売っていたんだが」

「そんなもので私は誤魔化されないぞ」

「ちなみにルカが好きな、“フリノ蕪”のスープが絶品のお店があるらしいぞ」


 私は誤魔化されないぞと思っていたのに、その一言で心の壁が砕け散った。

 だって私の異世界での好物だったから。


「さあ、どうする?」


 今まさに勝利の笑みを浮かべているリオネルに私は抵抗できず頷く。

 そしてその日食べたスープは美味しくて、うやむやなまま気づけば、リオネルに宿に連れ込まれ、しかもその部屋にはダブルベッドしかなかった。


「よ~し、久しぶりにルカと一緒に寝るぞ~」

「……リオネル。そろそろ一人で寝ようって言ってベッドや部屋を分けてもらったのに、いくら兄弟みたいな間柄とはいえ、何で一緒なんだろう」

「俺がルカと寝たいから」


 言い切ったリオネルに私は、もう何も考えたくない、疲れたと思って、そのままそのダブルベッドでリオネルと一緒に寝てしまったのだった。


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