最弱詐欺はほどほどに
なぜかその場所で、イリスさんと遭遇してしまった私。
しかも彼は私に用事があるらしい。
私への用事だがそれは……と思っているとイリスさんが、
「申し訳ありませんが、ルカと二人きりにさせていただけますか」
「は、はい」
「ありがとうございます」
そうイリスさんにセレンは言われて、私の方を一度見てから去っていった。
特に何も聞かずに去ってくれてよかったと思いながらも私は、
「イリスさん、こんな風に話しかけられると私が目立つ気がするのですが」
「自称“最弱”(笑)などとやっていたところで気づかれるのは時間の問題です」
「で、でも私、ここで普通の学園生活を送りたかったのに……」
「巻き込まれ体質で能力があるようなあなたをそう簡単に我々が手放すと思いましたか? 敵に回っても危険なのに?」
そうイリスさんが意地悪な事を言うので、
「リオネルを私が裏切るわけないじゃないですか」
「貴方を繋ぎとめる鎖がリオネルのみですか。ですが抜けている貴方が万が一、敵に捕らえられて洗脳でもされたら、どう思いますか?」
「抜けている……酷い」
「そういったことまで全部考えている私の苦労も、もう少しは考えてください」
深々と嘆息したイリスさん。
言っていることが正論で厳しいのはいつものことだとと思いつつも私はやはり、
「それでも私は一般人のように普通の学園生活がしてみたいんです。Fランクにせっかくなったのに……」
「最弱詐欺はほどほどに。でないと、あまりFランク、Fランクと言っていると、first(一番)のランクと間違えらえますよ」
そういわれて私は黙るしかなかった。
私の耳はこちらの言語が私になじみやすい形で理解されるようなのだけれど、どうやらそういった意味にもなるらしい。
なんで最低が最高になるのか。
言葉遊びとはいえ、いやなものを聞いてしまった私は、それ以上この話を続けたくなかったので、本題に移ることにした。
「それで私を呼び止めたのは、どういった理由があるのですか? 何か新しい情報が入ったのですか?」
「……先ほどのセレンは、ルカ、貴方のご友人でしたね」
「? そうですが」
「では、そのセレンがその……迫られていましたが、その人物とも友人ですか?」
どうやらキズヤという人物が気になっているらしい。
あの“いばら姫”と関係している人物だから私たちに情報を求めているのだろうか?
けれど、この学園内のことはすでに、このイリスさんのことなら調べ上げて、私たちの交友関係の人物もある程度は把握しているはず。
だから私は奇妙に思いながらも、でもそういえば“いばら姫”関係の話はあのクロスといい、秘密主義な部分もあるからと私は気づいて、
「いいえ、彼とは友人ではないです。ただセレンとは同郷の人物ではあるようです」
「彼が仲間なのですか? その“いばら姫”達の?」
「そうらしいです。どうかしたのですか? イリスさん」
そこでイリスさんが黙って少し考えてから、
「クラウド殿下にも伝えておかないといけませんね。……彼は、我々にとって監視対象の人間です」
そう、イリスさんは答えたのだった。
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