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拒絶して傷つけるだけで

 拒絶するようなクロスの言葉。

 そこでリオネルが、


「魔王候補に関する話は、こちらも協力できると思うが」

「……我々の事は、すべて我々で解決できる。気持ちは嬉しいが、そうでなければ、外部の力がなければどうにもならない、そんな存在になるつもりはない」


 言い切ったクロスに、それ以上はリオネルは何も言えないようだった。

 そして、クロスはセレンに向かって、


「セレンさえここに来なければ全てが上手くいくはずだったんだ」

「それ……は……」

「まさか力が弱まった状態でここまで来るとは思わなかった。……冷たくすれば意気消沈して故郷に帰るかと思ったのに、粘り強いし……」


 呻くようなクロスの言葉。

 どうやらあのクロスの言動自体が、セレンを心配しての言葉ったらしい。

 そこでセレンは驚いたように、


「私を心配して、だから冷たくなったの?」

「“鍵”を持っている俺と仲が悪ければ、セレンを助けに来ないと油断もさせられるし、俺が“鍵”を持っていると気づかれにくい。しかも離れて行動していても何の不思議もない。そして“鍵”がなければセレンの能力は発動しない……なのにお前はこんな所まで来て」

「う、うう……クロスが冷たいからつい追いかけてきちゃった」


 セレンが俯きながらそう呟く。

 それを見たクロスが、何かを言おうとして、けれどすぐに唇を噛むようにして結び、セレンの方からわざと視線をそらしながら、


「こんな場所にお前は来るべきじゃなかった。そもそも似合わないそんな恰好までして、俺を誘惑しようとでも思ったのか? 俺は……そんなお前が、セレンが、“嫌い”だ」


 ここでクロスがセレンを嫌いだと言い切った。

 だが、依然としてまっすぐにセレンの方をクロスは見ない。

 けれど今の言葉はセレンには大きな破壊力があったようだ。


 小さく体を震わせてからセレンは、


「それ……は……クロス、の、本心……」

「そうだ」


 短く告げたその一言にセレンが小さく唇を震わせてから、


「クロスのばかぁあああああ」


 そう言って泣きながらその格好で走り去っていく。

 私としてはどこからどう見てもクロスは本心で行っているようには見えなかったのだけれど、それくらい今は自分から引き離すことを優先したのかもしれない。

 そう私は思いつつも、


「うーん、元はというと私の“ステータス・オープン”が原因だから、慰めにって来るよ。それといい方はクロスはもう少し考えた方がいいよ。拒絶して傷つけるだけで、“誰かを守れる”なんて甘えたことは考えないようにしなよ」

「それは、経験則か?」

「どうだろうね。守りたい相手はすぐそばにいないと、と思ったことはあるよ。……でも今は私はモブになりたいから一人がいいかな! さてと、私はセレンを追いかけるよ。スールによろしく」


 そう言って私は走り出す。

 私にだっていろいろな出来事がこの世界に来てもあったし、元の世界でもあったのだ。

 そう思いながら私はさらにセレンが逃げて行った方向に走っていきそこで、セレンが、以前いた人物に再び壁ドンのような状態にされているのを目撃したのだった。


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