試験を受けに行きました-4
筆記試験が終わり、学園内で休み時間となった。
なんでもこれから発表まで学園内で過ごすらしい。
そうなると、これから私が過ごす学園だから見て回りたい気持ちに私もなる。
「よし、学園内を見て回ろうっと!」
「よし、俺もルカについて行って、ルカをどこに引きずり込めるか確認しよう!」
「!? 何故!?」
「え? だってすぐに逃げようとするみたいだし? 捕まえないと。一緒に“楽しい事”が出来ないし?」
「楽しい……こと?」
私は、リオネルの呟いた楽しい事について真剣に考えてみた。
私は六歳の頃、リオネルを助けた時からずっとリオネルを見てきたのだ。
それ故に、その頃から現在においてリオネルが言う“楽しい事”がどういったものか一瞬にして、大量に思い出された。
私自身が世間知らずで、この世界の事をあまり知らなくて、そしてリオネルに甘かったせいで、あーんな事やこーんな事になったのである。
それがリオネルは“楽しかった”ようで、そして私もそこそこ楽しかったのは事実だ。
だが、それらは“平凡”で“普通”の学園生活には必要になるどころか邪魔であるはずなのだと思う。
何とかしてリオネルから逃げなければ。
でなければ私の普通の学園生活が……と、そこで誰かが言い争う声が聞こえた。
「どうしてそんな事を言うの! 私は必死になって……」
「誰もついてきてくれなんて言っていない」
「! どうしてクロスは何時だって一人で決めて……」
「お前には関係のない話だ。それに受けた科目が違うんだろう? セレンは魔法科で、俺は剣士科」
「で、でも剣士だって私達魔法科の授業で、一緒に魔法を学んだりするはずだよね!」
「……そもそもセレン、お前にそこまで魔法の才能はないだろう? ……どうせ落ちるに決まっている。それこそ最下位でな」
意地悪くセレンという人物に言うクロス。
ちなみにこのセレンという少女は、先ほど私の隣で一生懸命花を育てていた少女だ。
薄いパステルカラーの水色の髪に緑いろの瞳の、今思えば私よりも可愛いの少女だった気がする。
対して一緒にいるクロスと呼ばれた少年は、リオネルと同じくらいの背丈の男で、濃紺の髪に赤い瞳をした人物だった。
美形の範疇に入るが、その気だるげな様子が全てを台無しにしているように見える。
そう思っているとそこでセレンが、
「最下位じゃない。私よりも魔法が下手な子がいたし!」
「お前より下手って、そもそも才能がないんじゃ……」
「す、少なくとも私よりも下手な子がいるんだから、私に才能があるはず。それに試験だってできたし、絶対にここに受かってやる」
「……勝手にしろ」
うんざりしたように背の高い方の少年、クロスがどこかに行こうとする。
それをセレンと呼ばれた可愛い少女が待ってよ~、と追いかけて行く。
と、それを見ながらリオネルが、
「さっきの、セレンという名前らしい少女が言っていたのは、ルカの事じゃないのか?」
「多分そうだと思う。隣にいたし。わざと育てるのに時間をかけていたし」
「本当にルカは、Fランクになりたいんだな。まあいいや、学内の色々な試験やら何やらでランクは上がるから。……いつまでFランクでいられるんだろうな」
などと意地悪く言うリオネルに私は、絶対にFランクになり続けてやると決めたのだった。
それからしばらく学内を歩き回り、学食で飲み物を楽しんだりしてから試験結果を見ると、合格者が成績順に並んでいる。そして、
「わ~、流石リオネル。1位、しかもSランクだって」
「そういうルカは、126位、Fランク……さて、これから散々目立たせて俺と一緒のSランクになるよう頑張らないとな」
「が、頑張らなくていい!」
私は涙目になりながらリオネルにそう言い返したのだった。
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