一瞬でそれは終わった
私が最弱でないことがばれてしまう、その危機に私は苛まれて必死で抵抗していたら、セレンに気付かれてしまった。
セレンはどことなく顔がこわばっているように見える。
「……いつからいたの?」
それに答えたのは、スールだった。
「壁ドンされていた時からかな。何だか痴情のもつれ? ぽく見えたけれど違うの?」
「……違うよ。彼は“私”が好きなんじゃなくて、私の“力”が好きなだけなんだ」
「あ……そうなんだ……」
スールが察しというかのようにそれ以上聞かなくなるけれど、そこでセレンは困ったように、
「話、全部聞いていたんだね。私、魔力とかそういった能力が“低い”って事になっているから、今の話を聞かないと納得できないと思うんだ」
「え、えっと……」
「記憶を消す魔法、今の私は上手くいくか分からないけれど、ごめんね」
そう言ってスールが手を伸ばすけれどスールはササっとそれをよける。
さらにそれをセレンが追いかけてを繰り返して、
「今回は黙っているからやめてよ~」
「信用できないよ」
「そんな~、見ていないで、ルカとリオネルは助けてよ~」
そこでスールが私達に助けを求めた。
私はどうしようかと迷って、セレンに向かって、
「一応、“いばら姫の騎士”関係の情報もいくらかは、私達も持っているんだ」
「……え?」
「だから言いふらしたりしなければ、その話は出てこない状況だけれど、どうする?」
「な、なんで……い、いえ、もしかして、適当に言って……」
「“いばら姫”と“聖者”の関係と言っていいかな」
そこでセレンが凍り付いた。
どうやらこの辺りで理解してもらえたらしい。
スールが興味津々といったように私を見ているが、そこでリオネルがスールに、
「スール、この話は絶対に内密に。でないと、今まで以上にセレンが危険にさらされる」
「それはこの前の演習のようなあの人達が襲ってくるって事?」
「そうなる」
リオネルのその言葉にスールが小さく呻いた。
これは結構重大な秘密を知ったのではなどとブツブツぼやいている。
それにセレンは今、魔法がある程度使えなくなっているらしい。
以前攫われた時の件が絡んでいるらしいと話していたけれど……と私は思いながら、とりあえずセレンの能力を“回復”させることにした。
だから私はセレンに、
「セレン、ちょっといいかな」
「……何でしょう」
「セレンの能力を“回復”させたいから、こっちに来てもらえるかな」
「え?」
そこで不思議そうな声をセレンが上げた。
でも私としては、
「能力が回復したら、一応はいくらか自分の身は守れるんだよね?」
「それは、まあ……」
「じゃあそうなればいいのかな。治すからこっちに来てね」
「え?」
「……面倒だから私がいくね」
私はそう言ってセレンに近づき能力を使う。
一瞬でそれは終わった。
ふわりとセレンから甘い花のような香りを私は感じたけれどそこで、リオネルが眉を寄せた。
「見ていると、“不愉快”だ」
そう言って、リオネルは私の背後に周り抱きついてきたのだった。
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