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何かまだ実力を隠していると

 何処か愁いを帯びた声でセレンが、目の前の男に言っている。

 これはもしや、痴情のもつれ……そう私は思っているとそこで、セレンの前にいる男が苛立ったように、


「まだあの、クロスばかり追いかけているのか? あいつは、一度“失敗”しているだろう」

「! で、でも結局は私を助けてくれて……」

「その代償が、セレン、お前の力が大分弱くなっている、それだろう?」

「それは……でも、頑張れば戻るかもしれませんし。それにここには古い魔法使い達の本も沢山あってそれが読める場所にあると……」

「そんな希望にすがってここに来たのか? 違うだろう? セレン。お前は未だにクロスを追いかけているんだ。……結局、未だに“騎士”の称号をクロスに渡したままなんだろう? あいつは“騎士”としていつもセレンの傍にいないといけないのに、今はどうだ?」

「それ、は……」

「もうあんな奴はやめて、別の“騎士”を指名するべきだね。“俺”は優秀だぞ? 何しろ学園三位の成績で入り、剣術に至って今の所、クロス以外は敵はいないからな」


 そう自慢する目の前の男にセレンは沈黙する。

 うつむき加減にセレンは、再び首を横に振り、


「私は、クロスを私の“騎士”として選びました。私はそれを覆すつもりはありません」

「! この……」


 苛立ったようにそのセレンの目の前にいる男は、そう呟くも、セレンはまっすぐにその男を見てそう言い切る。

 そしてさらにセレンは、


「確かにあの魔王になりたいという狂人に私自身が攫われたのは事実です。ですが私が、クロスから離れたのが一番の原因です。……その罪は私自身が一番よく知っています」

「……そんなにクロスがいいのか、俺ではなく!」

「はい、私は、クロスでないと駄目です。キズヤ」

「……どうあっても俺を受け入れないのか? ……今一人でこんな学園に来て、危険な状況なのに……。貴方はずっと狙われているという自覚がないのですか? それでもセレンはそちらを望むと」

「はい」


 言い切ったセレンに、歯ぎしりする音が聞こえる。

 それから舌打ちをするような音が聞こえて、


「後悔しますよ。俺を選ばなかったことを」

「それは私が決める事です」

「……最近は以前よりも強くなって、クロスすら倒せそうな成長株の俺を袖にするとは、人を見る目がない」

「私は、クロスを信頼しています」


 さらにセレンはそう言い返すとそれ以上は、キズヤはそれ以上何も言わないようだった。

 怒ったような寂しい様なそんな様子を私は見送りながらも、以前から狙われていたの下りが気になる。

 もしやその魔王になりたい狂人は、倒されていないのか?


 それなのにこんな学園に一人無防備に……。


「可能性としては、“囮”かな」


 つい呟いてしまった私にリオネルが、


「セレンがか? 重要人物らしいのにここまで無防備だとありそうだな。あそこにいる学生も同郷のようだし他にも潜入してそうだよな」

「そうだね、後で調べてみてもいいかな。でも、セレンは能力が上手く機能しなくなっているんだ。……危険だし、今のうちに“回復”させておいた方がいいかな?」


 そう私がリオネルと話していてそこで気づいた。

 すぐそばでスールが楽しそうに私を見て、


「やはり何かまだ実力を隠していると」

「! 気のせいです」


 慌ててそう言い返すとそこで、私達にセレンが気付いたようだったのだった。


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