試験を受けに行きました-3
それから体力の測定、魔法耐性の測定等々があり、他にも実践を模したという魔法を扱う試験があった。
ただ私は、こういった事情で魔力が“ゼロ”になっているのですと説明してから、一番穏便な植物を育てる魔法に。
すぐそばでバラのような花を今まさに咲かせようと頑張っている受験生がいた。
彼女のように魔力を調整すればいいかな?
それとも時間制限いっぱいの時間を使って成功させた方が、Fランクになりやすいだろうか?
よし、そうしようと思った私から少し離れた所で、歓声が上がった。
「す、素晴らしい。まさかこんなに一気に育て上げ、しかも人の形に花を作り上げるなんて。魔力の操作も育てる速度も段違い。これはもう、奇跡だ。大型新人が入って来たと言わざる負えない!」
試験管らしき人物というかおじさんが、感涙のあまり涙を流しながらそう語っている。
つい気になって声の方を見てしまうと、真っ白の花で人の彫像のようなものを作っているのに気付く。
リオネルはそのそばで満面の笑みで私に手を振っているが、そのリオネルよりも私はその花の彫像の方が私には気になった。
だってあの形はどう考えて私の特徴が……。
だが、それよりもあれくらいのものであれば私だって、
「いや、駄目だ。く、あれに対抗したらFランクになれない。私は……私は平凡になるんだ。というかリオネルの傍に居たら、絶対に私は、そこらへんに生えている雑草にすらなれない。ガラスケース入りで高級な植木鉢に植えられている雑草になってしまう」
自分で呟きながら、果たしてそれは雑草なのかという気がしないでもないけれど、それは私の願いなのだ。
だからすぐに私はリオネルに背を向けて、頑張らないと花を咲かせられない“劣等生”を演じることにした。
すでに私のすぐそばで花を育てていた彼は、どうにか咲かせられて笑顔になり、それから試験管に報告しようと振り返り、リオネルのあの花の像を見て凍り付いていた。
気の毒にと思いながらも私は、頑張って花を咲かせているふりをしていた。
出来るだけ一生懸命やっているように見せかけるために、私は真剣にそれにつて細心の注意を払っていた。
だから私は気づかなかったのだ。
私の背後に忍び寄るある人物の影に。そして、
「ふぎゃあ!」
後ろから伸びてきた手が私を抱きしめるようにしてぐっと抱きつく。
そしてこんな事をされてしまった私はつい、魔力注入の加減を間違って、
ぼんっ
一輪の目の前の花が、私の身長よりも二倍はありそうな大きさに巨大化して花を咲かせた。
こ、これではFランクにしてもらえない、どうすれば、と思った私は、こんな悪戯をしてきた相手に全部責任を擦り付けることにした。つまり、
「リ、リオネル、私の試験を手伝ったら私が失格になっちゃうよ!」
「え、でも……」
何か言いだしそうなリオネルだが、教官に怒られて私から引きはがされる。
こうして私は無事、小さな花を時間いっぱいいっぱいでしか咲かせられないのを見せつけつつ、次に筆記試験に向かう。
合格点はすでに決まっているので、もし何かのミスがあっても入れるように私は問題の解答を調節する。
リオネルと一緒に勉強をさせられていた(私がいると対抗心を燃やして、勉強をリオネルが頑張るので)関係もあって、この試験は余裕だった。
だが、今回の平凡で平穏な魔法学園生活を手に入れるために、出来ればぎりぎり、Fランクをとりたい。
怨念のように平凡平凡FランクFランクと繰り返し心の中で呟きながら私は、筆記試験を終了したのだった。
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