表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/85

般若のお面

 私の平穏で路傍の石のような学生生活が、こんなに容易に崩れ去りかけている。


「何てことだ……しかもすべてがリオネルにとって都合の良い方向に進んでいく。酷い」

「酷くないぞ。やはりルカの才能は世の中に出るべきなんだよ」

「出たくない~、日陰にこっそり咲く小さな花のように私は生きていきたい」

「可憐な感じで可愛いな~」


 などと私達が延々と会話をしているとそこでスールが、


「早くしないと定食メニューが売り切れちゃうよ」

「そ、それは困る。えっと今日の定食は……」


 そう思ってみているとオムライス定食と、ビーフシチュー定食が残っているようだった。

 だから私はオムライス定食を選ぶも、


「もうこれで終わりだよ」

「そんな……」


 私の目の前で売り切れてしまう。

 正確には私の目の前のリオネルがオムライス定食を奪ってしまったがために、私の分がなかったのだ。

 恨めしく思いながらリオネルを見るとリオネルは、ニカッと葉を光らせながら笑い、


「そう、ルカ。これは避けられない運命だったのだ!」

「そんな運命、ぶち壊してみせる! というかリオネルのその食事を私が……」

「でも俺もオムライスを食べたいから、ビーフシチューと半分ずつ分けるのはどうかな」

「素晴らしいアイデアです」


 というわけで私達はそれぞれ定食を購入し、席に座る。

 それから半分づつを分け合う事になったのだけれど、


「はい、あーん」

「あーん」


 といったように私はリオネルに食べさせて、私もリオネルに食べさせてもらう。

 一緒に居るのが多かったのでこういった所は昔からだよなと思っていると、そこでスールとセレンが私達をじっと見ている。


「どうしたの?」

「いや、仲がいいなと思っただけ私達も食べよう、セレン」


 そう言ってスールとセレンはオムライス定食を食べていた。

 半熟卵がとろとろのオムライスに舌鼓を打った私は、それから午後の授業を受けてから、寮に戻る……と見せかけて。


「クラウド兄さんの所に行って今回あった出来事を伝えておこう。後、“いばら姫の騎士”等の話を伝えておこう。もしかしたならクラウド兄さんの方がそういった事には詳しいかもしれないし」

「そうなのかな?」

「……イリスさんも詳しいかもしれないからな」

「そちらは納得できる答えでした」


 私はそう答えて、学園長室に向かったのだった。










 ノックしてはいると、部屋にはイリスさんしかいなかった。

 周りをリオネルは見まわしてから、


「クラウド兄さんは何処に行ったのでしょうか?」

「今は何処にも行かないように、正確には好き勝手しないようにしています」


 にこりと笑ったイリスさんの顔が、般若のお面のように見えたのは私の気のせいではないだろう。

 そしてそれに気づいたらしいリオネルがため息をついて、


「今度は一体何をしようとしたんだ兄さんは」

「可愛い魔法使いの服の支給をまだあきらめていないようでしたので、こちらで処理しました」

「……そうですか」

「それで、ここに来たのは何か、報告があったのでは?」


 そうイリスさんは聞いてきたのだった。


評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ