私の平穏な学園生活が
授業終了の鐘が鳴り、私達は昼食を食べに行く事にした。
ここの学校のお昼はとても美味しいらしい。
なんでもこの町周辺で採れた地元野菜を使った料理が食堂で出されているらしい。
というわけで食堂に向かった私達なのだけれどそこで私は気づいた。
「なんで私達はこんな、コスプレで!」
「……気づいてしまったか。だがもう逃がしはせぬぞ」
「放せぇえええ」
そこで私は可愛く着飾った状態で食堂に向かっていることにようやく気付いた。
だから慌てて戻ろうとしたのに、スールに手を掴まれて逃げられない。
何てことだと思っていると、今度は別の方の手をリオネルに捕まれた。
「こうしてルカが逃げないようにしような」
「リ、リオネルの薄情者! というか、リオネルを私、着替えさせてない!」
「残念、時間切れだ。また今度な~」
「く、こうなったらそのうちリオネルもミニスカニーソにするんだ。それだけは覚えておけよ」
「おう、がんばれよ~」
そんな余裕めいたリオネルの声を聞きながら食堂に入ると、ざわめきが周りから聞こえたのだった。
ざわざわざわ
食堂の人達の視線が私達に集中する。
やはりこの格好は違和感があるのだろう、いや。
「も、もしかしてこれは、似合わない私のこの格好も含めて、お前のような最弱生徒がリオネル様の傍にいるなんて、と言ってくるキャラが!」
「ははは、ルカは物語の読みすぎだな」
「……リオネルに言われたくない。でも、それを理由にして私はリオネルから離れられる。そして目立たず最弱Fランク生活を……ぐえっ」
そこでリオネルが私の背後に回ったかと私を後ろから抱きしめた。
何故!? と私が思っていると、
「こうすれば俺からルカは逃げられないよな」
「は、放せ。というかそういった役割の人来てくださいぃぃぃ」
と私は呼んでみたが、誰も来なかった。
むしろひそひそと、リオネル様はよっぽどあのルカという最弱が好きなんだねとか、可愛いから気に入っているのかなとか、幼馴染らしいよとか……そんなうわさ話が延々と、彼らは小声で話しているらしかった。
「な、なんで私とリオネルの間を引き裂いてくれないの!」
「それだけ強い絆で結ばれているんだよ~。ま、ルカが俺から離れて行ったら、俺、“闇堕ち”するけどな~」
「……このリオネルがそんな展開になる光景は想像できない」
「酷いな~、あれ、誰か来たね」
「! まさか私とリオネルの仲を引き裂いてくれる人!」
そうすれば私は地味平凡に戻れるのだ、と思ったがどうも様子が違う。
それは美少女というか綺麗というか片方は可愛い感じの二人組だった。
上級生である彼らは私達を見て頷き、
「これが新しい“アイドル”か」
「これは期待が出来そうだね。ようやく私達に来るあの視線も分散されるか」
「むしろ新しい物の方に目が行って、私達の方に来ないのでは」
「素晴らしい」
などと語り合っている。
それを聞いて私は嫌な予感がした。
するとそこでスールが、
「あ、この人達は上級生の“アイドル”で……」
と説明してくれたが私はそれどころではなくなにも耳に入って来ない。
だって私達は新たな“アイドル”として注目されるらしいのだ。
「私の平穏な学園生活が」
「残念だったな~ルカ」
リオネルの楽しそうな声が、私の耳にこだましたのだった。
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