試験を受けに行きました-2
まずは、魔力測定であるらしい。
何やら黒くて大きな箱型の装置が置かれていて、それと黒いホースのような紐が繋げられている。
その黒いホースの一番端には銀色の筒状の握る場所があり、それを握って魔力を測定しているようだった。
この世界には魔法っぽいものもあるけれど、測定したデータを数値化して保存するコンピュータのようなものが存在している。
魔法的な過程は不明だがそういう近未来的な技術がある。
またこれはギルドカードもそうだ。
なんかこう、最先端技術という意味でもギルドカードは興味があるよなと思いながら私は、ようやく私の番が回ってきてそれを握る。と、
「どうやら機械が故障しているようだ、まいったな」
「え? そうなのですか?」
「そうなんだ、ゼロしか出てこない」
「あ、それでいいのです」
私がその機械の測定をしているおじさんに聞くと、悩んでいたおじさんがそう答えたので頷いた。
するとおじさんは目を瞬かせて、
「魔力がゼロって、本当に君、“生きているの”?」
「ごふっ」
「どんな病人でも魔力が幾らか出てしまうからね。もう魔力が測定できないのは“幽霊”か何かとしか。君、“お化け”かなにかなのかい? “お化け”は試験が受けられないよ」
「え、えっとその、私、特殊体質で魔力が測定できないのです。だからいつもゼロと表示されて」
「え! そんな特殊体質が? 魔道具とかではなく?」
「は、はい」
「弱ったな……ギルドカードは?」
「持ってないです」
「……仕方がない。どうするかは上と相談だ。とりあえず後ろの人がつっかえているから、こちらの紙に理由を書いておいたからこれを持って先に進んでくれ」
「はい」
というわけでその紙を貰って別の測定に向かうはずだったのだが、とりあえずは待っていた方がいいかなとリオネルを待っているとそこで、
「す、凄い、こんな魔力の数値は見たことがない。君はもしかして貴族か何かかな?」
「いえ、父は配管工でジャンプが得意です」
リオネルが測定らしく賞賛されていたようなのだが、この学園に入るための“設定”を聞いて私は噴出した。
私はこの世界にいる間、何故か元の世界のものも持ってこれるようになっていた。
いくつか手順はいるけれど、どうやら元の世界のものをこの世界で複製しているようなのだ。
その関係で某、ジャンプが得意な兄弟のゲームを持ってきたら、リオネルも気に入ってくれて、そのまま王宮内で一大ブームに。
他にもピンク色の可愛いキャラクターや、球状のボールにモンスターを入れて戦うゲームなども受けてしまった。
面白いから仕方がないよね、うん。
でもリオネルのその設定はどうなんだろうな、という気が私はした。
一応は王子様なのでその身分を隠すためとはいえ、何かが違う気がする。
そう私は思ったけれど、
「配管工ですか。全く関係なさそうな両親から……これは、成り上がりしそうですね。楽しみだ」
「ありがとうございます。俺、頑張ります」
などとリオネルがいい、にこりと微笑む。
すると周りの女子たちも含めて、はうっというような簡単おため息をこぼす。
これがリオネルの持つ必殺技“天使の微笑み(えんじぇるすまいる)”。
この笑顔の前に多くの者達が撃沈し、私も例にもれず、である。と、
「あ、ルカ、待っていてくれたのか?」
「……やっぱり置いていこう。私はリオネル離れをしないと」
「え~、なんでだよ~」
そういいながら、リオネルを無視して進もうとする私を、リオネルは追いかけてきたのだった。
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