秘密にしておくよ
去っていくクロスを見送った私だけれど、そこで私は気づいた。
「ぼ、私の平穏な学園生活が……」
「やっぱりルカにはそんなものは無理だったんだ。さあ、俺と一緒に新たな冒険に行こう!」
リオネルが私を唆そうとしてくるがそれには乗らない。
私は平凡な魔法学園生活を送るのだ!
降りかかる火の粉は振り払うが。
そう思っているとそこでリオネルが、
「でも相変わらずルカは俺の“ヒーロー”のつもりなんだな」
「うん、だって今まで何回、リオネルオ守ったと思う?」
「そうだな。初めて会った時、あの時ルカに出会っていなかったら、俺、どうなっていたんだろうな……」
遠くを見るように呟いた。
確かにあの時私がリオネルを助けなかったなら、“生贄”として殺されていたかもしれない、そう、以前の私ならそう思っただろう。
けれど最近、リオネルがそれを口にした時の表情と口調に、“別の意味”があるように思えて仕方がないのだ。
気のせいであればいいけれど、リオネルは私に“何か”を隠している。
そんな気がするのだ……そう私が思っているとリオネルが、
「その“ヒーロー”の役目はそろそろ俺に譲ってくれないか?」
「! な、なんで!」
突然そんな事を言われて私は焦った。
だって私はリオネルの“ヒーロー”であるわけで、そう私が言い返す前にリオネルが、
「背だって俺の方が高いしな」
「し、身長は関係ないよ! 私だって頑張ったのに!」
そういい返しながらも一向にリオネルを追い越せないでいる私は涙目になる。
けれどそんな私をリオネルは抱きしめてきた。
「リオネル?」
「ほら、こうやって抱きしめるとルカだって逃げられないじゃないか」
笑うようなリオネルの声に私はじたばた暴れてみた。
けれど、リオネルの力は思いのほか強くて私は振りほどけない。
でもこうやって抱きしめられるのは心地い様な……そう私が思っているとリオネルが私の耳元で囁く。
「そろそろ“ヒーロー”役は辞めて、俺に譲ってもらえないかな?」
「絶対に嫌だぁあああ」
「ルカは我儘だな。まあいい、その内その役目も奪ってやろう~、今は俺は学年一位でルカは、ここでは最弱の部類だから……俺が守っているような形になっても何らおかしくないな」
「う、うぐ……」
まるですでに勝利したかのように私はリオネルに言われてしまったのだった。
戻ると、スールとセレンが首を長くして私の帰りを待ちわびているようだった。
まずセレンが私にクロスの事を聞いてきたので、
「セレンの事がやっぱり心配だったみたいだよ」
「! そうなのですか」
セレンが嬉しそうだった。
セレンはクロスが大好きなんだなと私が思っているとそこでセレンが私の方をちらりと見てから意を決したように、
「……それでその、私を襲ってきたあの人達をルカとリオネルは知っているみたいだけれど」
「実は、昔、ああいったのに襲われたことがあって。それで。だからそこまで詳しくは知らないんだ。でも昔見たなって思って、その時の事が思い出されて執念深んだよねって言ったんだ」
「そ、そうだったんだ」
「うん、危険な相手だったから。だからリオネルのお手伝いを私もがんばったんだ。本当は私、普通の魔法学園生活が送りたくて」
という話にした。
大体あっている話である。
これでセレンの方は私に余計な詮索はしなそうだ。
特に平穏な魔法学園生活……分かりますとセレンが呟いているのを聞いて大丈夫だと思う。
問題はこのスールだがそこで、
「うん、秘密にしておくよ。その方が楽しそうだし」
そう答えるスール。
だがその笑顔を見ていると『いい? これは絶対に秘密だからね?』そう言って皆に広まっていくパターンに思えなくもない、と私が考えているとそこでリオネルが、
「それでこれから、衣装部に直行したいんだがいいか?」
などと言いだしたのだった。
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