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逃げられそうにないな

 私は正直に話しただけだった。

 だがそれで初めてクロスが笑った。

 これで態度を軟化させてくれれえばいいと私は思ったけれど、


「なるほど。面白いな。だが、お前達が怪しい事には変わりない」

「確かに怪しいね」

「自分で言うのか」

「私も話せない事があるからね。でも“贄”としてリオネルが何度も狙われたことは事実なの」

「……セレンと同じだな。お前達の話を聞く範囲では」

「そういえば今回も、セレンが狙われたようだったね。でももしも魔王になりたい人間の“贄”として狙われるなら、私達も無関係じゃない。リオネルにも被害が来るかもしれないから、その辺りは協力できると思うけれど、どうだろう?」


 そう私が提案するとクロスは私の顔をじっと見てから次にリオネルの様子を窺うように見て、首を振った。


「残念だが俺達の事情を部外者に漏らすわけにはいかない。そういった意味で、協力は出来ない」

「でも私の“ステータス・オープン”で正体は分かっているよ? セレンにも多分これをすれば分かるけれど」

「……セレンには手出しするな」

「あまり知られない方がいい“能力”か何かがあるのかな?」

「お前には話す必要がない」

「話せない内容なのかな? そういえば“いばら姫の騎士”というのも、何なのか私は知らないや……リオネルは知っている?」


 そこで私はリオネルに話をふる。

 実の所、リオネルと一緒にお勉強させられたりしたものの、この世界の事についてはやはり現地人であるリオネルの方が詳しい事も多々ある。

 だから何か知っているんじゃないか、そもそも王族であるがゆえに一般人には秘密にされている話もリオネルは聞かされていたりする場合もある。


 そう思って話をふるけれど、珍しく困ったような顔になってリオネルは首を横に振った。


「聞いた事がないな。……何か別の名前で呼ばれていたなら、分かるかもしれないが」

「リオネルも知らないんだ。……本当にクロスは何者なんだろう? でも、セレンを狙ったという事は、その魔王候補か何かは、その“いばら姫の騎士”だか何だかも、知っていることになるのかな?」


 私がそう推察すると舌打ちするような音が聞こえた。

 クロスが渋面を作っている。


「やはり、あいつか……」

「あいつ?」

「……これは俺達の問題だ。巻き込んでしまった事と、セレンを助けてくれたことには礼を言うがこれ以上関わらないでくれ」

「……関わらずに済むような状況だったら私は関わらないよ」

「……そうなるように努力する」

「でも、セレンの傍にいた方がいいのでは?」

「……俺もここには目的があってきている」

「目的?」


 そう問いかけるとそこで私の方を見たクロスは……変な顔をしていた。と、


「ここは天才的な魔法使いの遺産である稀覯本等が大量にあるだろう?」

「へ? そ、そうなんだ」

「知らずに来たのか。もっとも、歴史的価値という部分が多いから、そこまで注目はされていないが……それも知らないできたのか。大抵はそういったマニアックな趣味でこの学園に来る人間が多いはずだが」

「わ、私はリオネルから離れて普通の学園生活を送りたくて来ただけで……」


 そこでちらりとリオネルを見たクロスが私をじーっと見てから、


「リオネルからは逃げられそうにないな」

「! な、なんで!」

「ずっとついてきそうだな。俺にセレンがついてくるように。少し同情した」

「ふ、ふえ」

「まあ、がんばれよ。そして俺達の事は詮索するな。……俺はまだお前達を完全に信用したわけじゃない」


 そうクロスは私達に言って、その場を去っていったのだった。



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