友達だからだよ
平穏で平凡な魔法学園生活がしてみたい。
それが今回の私の望みだったのだ。
なのに気づけばリオネルがついてきて、不穏な影が学園を取り巻いている。
私が行く先々で何らかの事が起こるから、とリオネルは言っていたが別に私は巻き込まれたいわけじゃない。
というかよくよく考えると、
「……平穏な学園生活のためには、この話は無かった事にしましょう。うん、それがいい」
私は全てを忘れて、この場から逃走を決めた。
そこでぐっと私の襟首が背後から捕まれた。
「今、逃げようとしたな」
リオネルがそう私に言ってくる。
この位置からは、リオネルの表情は見えない。
だが呆れを含んだような嗤う声で、
「だから普通の最弱魔法使いなんて、ルカに出来るはずがなかったんだ。一位をとる競争をしようよ」
「い、嫌だ、目立つし! そもそも何でリオネルがここに来ているんだ。一緒に居るだけで目立つしそれに、元の場所の方が安全じゃないの?」
「俺が思うに一番安全な場所は、ルカの傍だと思うんだよな~」
リオネルが楽しそうにそういう。
確かに私の能力があれば、大抵の場合は何とかなってしまう……そんな、この世界に及ぼす“影響”が大きい能力だ。
今のところ何かにつけてその能力を使っているが目立った反動はない。
そこまで考えて私は、
「そ、それに今は私が守らなくてもリオネルは自分の身は自分で守れるよね?」
「……そんなにルカは俺と一緒に居るのが嫌なのか?」
そこでリオネルが私の手を握って悲しそうにそう言う。
ま、またそんな目で私を見て、情で絆させるような……。
そう私は必死で抵抗したけれど、リオネルには甘い私はそれ以上抵抗は出来なくなってしまう。
と、これまでの会話を変な顔で聞いていたクロスが私に、
「なるほど、お前がそこにいるリオネルの“守護者”か何かか?」
「うーん、そういうわけではないかな。友達だよ」
「友達という割には親しいのに逃げだそうとしているようだが」
「だって目立つから。私も普通の魔法学園生活がしたいし」
「……お前の言っていることはよく分からない」
「? 私、そんなに変な事は言っていないと思うよ。私は普通の学園生活を送りたいだけ。でも……リオネルや傍にいる誰かが傷つけられそうになることと、その私の“我儘”を比較したら、前者をとるよって話だよ」
その答えはクロスにとってさらによく分からない物だったらしい。
「……お人よし、なのか?」
「そういえばそうなのかも」
「そのお人好しで、あんなことに手を出すのか?」
「それは今回の森での出来事? 降りかかってきた火の粉を払っただけだよ。……魔王になるための“生贄”には、私も嫌な思いを散々させられたしね」
「……お前が贄として選ばれたと?」
「違うよ、リオネルが狙われるから、私が守っていたんだ」
「どうして?」
「どうしてって……友達だからだよ」
「……その程度の理由で?」
「? 私は特におかしな事は言っていないはずだけれど」
「危険だと、怖いから関わりたくないと思わないのか?」
「だって私は強いし。リオネルのヒーローなわけだし」
「……ヒーローか」
そこでクロスが初めて笑ったのだった。
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