“秘密”だろう?
こうして一通り魔物を倒した私は、周りに誰もいないのを確認してローブをリオネルに返した、のだが。
「……」
「どうしたの? リオネル」
「何だかルカの匂いがしたような」
「わ、私はそんなに臭くないよ!」
などと言い返したりした。
確かに少し汗をかいたような気もするが、そこまでにおうとは思わない。
しかもリオネルはなんだか嬉しそうだし……やはりからかわれたのだろうか?
そう私が思っているとそこでリオネルが、
「それで魔物を倒した数は、俺の方が多かったような気がするんだ」
「! 私の方が多いよ!」
「いや、俺の方が多いね」
「だ、だったら倒した数を一緒に言おう!」
「……それでもしも引き分けだったらどうする? 俺が勝つとは思うが」
リオネルがそこでそんな事を言い出した。
でも私は、そのことに何の疑問も持たなかった。
今にして思えばあれすらも巧妙な罠だったのだと思う。
けれど、私の方が勝っていると思った私は、
「そうだね、両方コスプレか、無しか、の二択かな」
「じゃあ両方コスプレで。そうすれば少しでも俺はルカのその姿を見れる可能性が上がるからな」
「リオネルは自分が勝っている自信がないんだ!」
「俺は慎重なだけだ。というわけで数を言い直しは出来ないぞ」
「いいよ。というか私が勝つし。せーの……」
「「265」」
そこで私とリオネルは同じ数を口にした。
え? と私は思う。
「もっとリオネルは少なかったんじゃ……」
「ルカが倒している時に、後ろから襲い掛かろうとしているのも倒していたからな。それは見ていなかっただろう」
「う、うぐ……」
「残念だったな」
リオネルの勝ち誇ったその言葉に私はようやく、リオネルに嵌められたと気付いた。
これでは私も可愛い服で済めばいいような衣装をきる羽目に。
でも多分リオネルも綺麗だと思うからこれはこれで私にとっては役得な気も……などとうめいているとそこで、
「あ、大丈夫!」
「二人ともけがはなさそうです」
スールとセレンが手を振る。
結界は一応張ったけれど何かが攻撃してきたそぶりはなさそうだ。
今回はアレ一匹であったらしい。
でも今回は様子見の可能性もあるので今後は注意しないと、そう私が思っているとそこでセレンが、
「助けていただいてありがとうございました。えっと、その……お話を少し聞いてもいいでしょうか」
「いいよ。そして私達も聞いてもいいかな?」
「……あの、あまり話せないと思います。巻き込むわけにもいきませんし。でも、どうして気づかれたのかな……」
ぽつりぽつりと言葉を切りながら呟くセレン。
けれどそこで、撃ちあがる黄色い花火のようなもの見える。
時間より早いが集合の合図のようだ。
魔物が現れるのを察知してそうしたのかもしれないけれど、
「やっぱり動きが遅いね。だってもうほとんどの魔物は私達が倒してしまったし」
「そうだよな、もう少し早く動いて欲しいが……今度からこまめに連絡するか?」
「連絡するよりも倒しに行った方がはやいんだよね」
「そうだよな。と、話すよりも、集合しよう。そして……ルカが一緒に魔物を倒したことは、“秘密”だろう?」
それに私は頷き、セレンとスールにもお願いしたのだった。
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