よし、競争だ!
目立つ行動はあまりしたくなかったというのに、
「どうしてこう巻き込まれちゃうんだろうな」
「これはルカが俺と一緒に戦えって事なんだよ!」
「……平穏な魔法学園生活が、どうしてこんな事に」
「兄さんが来た時に、もうちょっと勘づくべきだったよな~」
「……あの人も危険に自分から飛び込むのが大好きだから……」
「違うよ、それで守ってもらったり、止めてもらったりするのが大好きなんだ」
その時のリオネルの表情は、どこか遠くを見るような目だった。
それを見ながら私は、あの人はそういう人だったと思いつつ、
「ここに来れば私たち二人を使える、とか考えていないよね?」
「……もしもの事があれば、くらいにしか考えていないと思う。兄さんも一応は俺達が危険に近づかないように、裏では動いているみたいだからな。なのに、何故かルカは巻き込まれているが」
「! ま、まるで私の周りに厄介ごとが勝手にふってくるみたいじゃないですか!」
「思い当らないのか?」
リオネルが茶化すように言うのを聞きながら私は言い返せなかった。
でも私は思うのだ。
私は何も悪くないのに何だか、危険な事に遭遇してしまう。
そう思っているとリオネルが、
「まあ、いざとなったら二人で頑張ればいいさ。ルカも時々抜けていたりするからな」
「! いつも私にばかり、リオネルは大変な戦闘は押し付けている気がするけれど!」
「ルカの能力は最強だからな。全てをお任せしてしまいたい気持ちにはなるな~」
「ぐぬぬ……やっぱり、リオネルから逃げるべきなのだろうか」
私は小さく呻いた。
私にすぐお任せして私を活躍させようとしてしまうリオネルは危険だ。
イメージで言うと、地味な私の後ろで、クラッカーを次々放ち目立たせるような行動をリオネルはとるのだ。
それもあってか英雄だのなんだのと……。
かといって、あれを見てしまえば今はリオネルから逃げられない。
「……はあ、何であんなもの見ちゃったんだろうね。今回のターゲットはセレンみたいだけれど、目標をリオネルに変更してくる可能性だってあるしね」
「あれ、俺の事心配してくれているのか?」
「うん、リオネルを“守る”って私は昔から決めているからね。正確には初めて会った時からだけれど」
私は先ほどのあれを思い出しながら、不愉快な気持ちになりつつそう答える。
確かに私は最弱でFランクで、それでもって平穏な生活をしたいとは思うけれど……それとリオネルの“危機”を比べたら、間違いなく私は後者を選ぶ。
それぐらい私にとってリオネルは大切なのだ。
そう言い切るとリオネルが苦笑した。
「なんだか“騎士”みたいだな。俺としてはもう少し愛の告白のような甘さがあった方が……」
「今、リオネルは何か言った? 後ろの方が聞こえなかったけれど」
「……これがよくある、難聴主人公というものか」
「……本当にリオネル、今、何て言ったのかな?」
私の世界の文化がよく分からない方向で使われかかっている気がして私は聞いてみたが、リオネルは答えない。
代わりに、リオネルは楽しそうに笑い、
「というわけで、どちらが沢山魔物を倒せるか競争な。で、負けたら相手の望む衣装を着る、どうだ?」
その問いかけはとても魅力的だった。
だって私はリオネルの言うような服を着ずに、リオネルに好きな服を着せられる。
はっきり言ってリオネルは美形だ、だから好きな服を着せられるのは楽しい。
「受けてたつ!」
「よし、競争だ!」
そうして、先ほどの悲鳴の主らしい生徒を襲う魔物が目の前に現れたので、まずは私が先に倒したのだった。
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