何かがおかしい
こうしてセレンが危機に陥ると何故かクロスが何処からともなく助けに来る、という状態なのが分かった。
「この感じだと、転移魔法も使えそう。でも剣士なんだ」
「剣の扱いで有名になったのに魔法使いを目指しているのも俺の隣にいるけれどな~」
私の呟きに、隣にいたリオネルが付け加える。
だがここで声をかけられた私はくる~りと首を回してリオネルを見た。
リオネルは相変わらず笑顔のままだが、そんなリオネルを睨み付けながら私は、
「……どうして助けてくれなかったのよ」
「俺と一緒に、高みを目指してくれないからな~。そして俺は、ルカのスライムプレイが見たかった!」
「なん……だと……」
「ルカは可愛いからな、目の保養でした!」
「……もういい、リオネルの親友なんてやめてやる!」
「あ、ルカが逃げそうだから手首を掴んでおこう~」
そう言ってリオネルは私の手首を強い力で握った。
私は懸命に引っ張ってみたけれどリオネルが放す様子がない。
うんうん唸りながら引っ張ってみるが私の力ではリオネルをほどけ無さそうだった。
「う、うぐっ、後で絶対に仕返ししてやる。寝ている時は気をつけろよ」
私は正面からぶつかって仕返しできる気がしなかったので、寝込みを襲う事にした。
後で徹底的に仕返しだと小さく笑っているとそこでスールが、
「仲がいいですね~、ふむ。それでそろそろ進みましょうか」
「う、うん。……リオネル、上に着るローブを貸して」
そこで私はボロボロになった自分の服と、次にスールのその……危険な場所が隠されているだけという格好を見て私は言うもそこでリオネルが、
「このローブはルカにしか貸さないぞ」
「! こんな格好のスールと一緒に居るのはいたたまれないよ! 無事なのはリオネルだけだし!」
そう私が言うとスールが手をあげた。
「あ、私は衣装を持っているから大丈夫だよ。この収納ペンダントに入っているんだ」
「そうなんだ。なるほど、だからあれほどドヤ顔で……」
「でもここの制服結構高いんだよね。……似た衣装を後で衣装部の人に新調してもらうか」
などとスールは言って、どこからともなくメイド服を取り出した。
どうしてあえてその服を選んでしまったのか。
そんな私の心を読んだかのようにスールが嗤う。
「私が最も可愛らしく男を“下僕”じゃなかった、“従者”に出来る“姫”としての魅力を存分に発揮できるのは、スカートなのだ!」
「“姫”なのに“メイド”なのですか」
何かがおかしいとしか思えないけれど、私はそれ以上考えないようにした。
このスールと話していると気がついたら“姫”なる物を受け入れてしまいそうだからだ!
何が学園のアイドルだ!
“姫”だ!
もっとかわいい子ならまだしもなんで私が……そう思った所で私の地図を見ていたセレンが、
「ここを左に曲がった方がいいのでは」
そう言って細い道を指さしたのだった。
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