逃げるよ!
魔法演習では、蛇のような魔物といった弱い魔物を倒してくるか、薬草の三種類のうちの一つをとってくるよう説明を受けた。
その薬草の一つが“オレンジ草”というものだ。
なんでも私達の世界のオレンジの香りがする草らしい。
もっとも、この世界の言葉が瞬時に理解できているように、私の中で認識しやすい言葉に変換されているのかもしれないが。
さて、その辺りの話は置いておくとして。
その“オレンジ草”は、オレンジ色の草でもある。
この世界では腰痛等にも効く薬草であり、また、腐蝕の呪い解除用の薬にもなる。
もっとも後者は使う機会があまりないが。
といった内容を思い出しつつまず私は、バラバラになって森の中の道に向かった後、
「“探査・“オレンジ草””」
まずは周辺、私を中心として前面に1km、左右に1kmの範囲指定を行い魔法を使う。
指定範囲内の魔力などを見ていき、目的の物を見つける魔法である。
それは一度見たことや手に入れたことのある物体を見つげだすといった用途にこの世界では使われている。
術者という“観測者”の“経験”が影響する魔法の一つだ。
もっとも私の場合は、特殊能力の関係で、“知らない物”でも見つけ出すことはできるが。
その辺りの事情は秘密にしておいて、そこで私は自分の手の平の上に周辺地図を浮かび上がらせる。
ゲームにある小さな縮小されたマップのようなものだ。
碁盤の目のようなグリットがうっすらと描かれて、距離が掴みやすい。
そしてそれには自分の現在地、魔物、目的の物体が現れて、縮尺のメモリがすぐそばにあるので分かりやすい。
そう思いながらそれを表していた私は、気づけばスールとセレンが唖然としたような顔で私の方を見ていた。
その視線は私の呼び出したマップに注がれている。
この展開はと思っているとスールが、
「それは、一体何?」
「えっと、探査の魔法です」
「探査の魔法はあっちの方にあるのが分かるといったような方角を感じるだけだったはずだよね。視覚的に映し出すなんて……地図にそのまま投影しても……いや、この地図はもっと正確な実際に今現在の形を……」
「え、えっと、これはそこまで正確ではないから、参考にしてもらえれば」
「いや、これ結構正確だと思う。この森にはよく来ている私が言うから間違いない。……ルカ、本当にFランクの魔法使いなのかな?」
「「え?」」
私と一緒に声を上げたのはセレンだった。
セレンは私を不安そうに見て、
「私と同じ下の方だったのに。下の方の仲間がいたと私は嬉しかったのに」
「……そこは喜ぶところじゃないと思うけれど」
「でも……」
といった話になった所で、目の前に兎のような魔物が現れた。
だがこの魔物は倒しても得点にはならない。
だから私は、ゲームに出ている選択肢の一つのように、
「皆、逃げるよ! 必要のない戦闘は全力で逃げるんだ!」
というと、リオネルがいるのに~実力が見たかった~とスールが叫ぶのが聞こえた。
だが私はお断りしたかった。
だってこういう展開になったら魔物倒しをリオネルに押し付けられそうな気が私にはした。
しかもこういった魔物も倒せば経験値が上がってしまう。
だから私はFランクであるために、出来るだけ戦闘は避けようと思って逃げる。
そして私達はその魔物から逃げきれたのだった。
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