魔法の授業
教室に先生が来たのでその話は中断になった。
出来ればこのまま立ち消えになってくれないかなと、私は淡い期待を抱いてしまう。
何が“衣装部”だ。
ドレスだのなんだの、それって女の子というか可愛らしい服じゃないか。
それを着るのが可愛い女の子なら何の問題もない。
だが、今の話からすると、この“私”が着ることになりそうなのだ!
私、格好いい感じの大人の女性になりたいのに!
……それにどうせ着るなら、今でも似合いそうなリオネルが一人で着ていればいいと思うのだ。
なのにリオネルは私に“可愛い格好”をよく要求してくる。
どうしてだ、と言って怒るもリオネルに甘い私はその都度、お願いをされてつい流されて、大量の黒歴史を量産してしまったのだ。
しかもある時は騙されてお城の舞踏会に出たら、見知らぬ貴族の少年に一目惚れしましたと告白されてしまったのは、悪夢のような出来事だった。
それ以来、ドレスを着ろとはリオネルは言わなくなったし、舞踏会に連れていかれることはなかった。
本当はそこまで着飾らない姿のままで行けたら、舞踏会は行ってみたい気がしたのだ。
だって料理がおいしかったし。
食い意地だけは張っているとリオネルに笑われた記憶がある。
けれどそれから一度として、舞踏会には連れて行ってもらえなかった。
そんな寂しい記憶を思い出しながら私は、授業に集中する事にした。
まず初日の授業なので、今までの復習を兼ねた、魔法についての大まかな説明がされている。
この世界の魔法は、地水火風に分かれ、それ以外の変わった魔法が光闇魔法と呼ばれている。
呪文であったり、魔道具であったり、それらを使用して通常は魔法の行使をする。
無演唱でも魔法は使おうと思えば使えるが、複雑なイメージを瞬時に組み立てて、しかも魔力の魔法変換効率が非常に悪いため、大抵失敗するか威力が小さくなってしまうため、使う者はほとんどいない。
のだが、リオネルはよく無演唱で魔法をバシバシ使っていた。
そして私も、無演唱で魔法をそれはもう……とはいうものの、いつも無演唱や自身の特殊能力に頼るわけにはいかないため、呪文も魔法陣などもがんばって暗記した。
それはとても大変だった。
とはいえ魔法の中では、特殊能力は更に別カテゴリーに分けられる。
何故なら無演唱ながら、呪文を唱えたり魔道具の補助があるのと同じかそれ以上の効果が出せたり、現在の魔法額では到底不可能な魔法が実現可能であるからだ。
それ故に、特殊能力はその人の固有スキルとも呼ばれたりする。
ちなみに私の固有スキルは……と思った所で、教科書の32ページを開くよう言われた。
私は慌ててページをめくり、必要事項に線を引いていく。
すでに学んだ事のある部分なので、重要な部分が分かりやすくていいと思う。
そうしているうちに、次々と説明がされて、それをノートに取っていく。
やがて授業が終わり私が背伸びをしている所で、すっと目の前に紙が差し出された。
見るとスールが私の目の前に紙をさし出したようだ。
そしてそれはすぐにリオネルに奪われた。
「そ、その紙は何だ!」
「ん? 入部届。ルカの分も書いておいてやろうな」
「やめてぇぇぇぇ」
私の悲鳴がこだましたのだった。
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