どんな格好でも
リオネルに手を引かれ永教室にやってくると、後ろの方の席が埋まっていた。
皆やる気がない、否、あのあたりにいるとFランクとして……と私が真剣に考えていると、
「あ、ルカ、こっちだよ~」
ドワーフのスールが私達に手を振っている。
だが私は見なかったことにした。
あの人と一緒にいると目立ってしまうだろう。
それは本意ではない。
そもそもあのあたり人が少ないし! と私は思ってこっそり逃げようとした。が、
「うーん、うーん」
「ルカが逃げようとすることなどすべて予想の範囲内だ。さあ、行こう」
「いやぁあああっ」
リオネルと手を繋いでいたせいで私は、逃げられない。
ギュっと手を強く握られて、私は必死になってリオネルから逃げようとするのに普通の腕力では振り払えない。
かといって身体強化系の魔法を使ってリオネルを攻撃しようものなら、リオネルに怪我をさせてしまうかもしれない。
それにとても目立つ。
目立つのは不本意だ。
だから唸り声をあげながらずるずるとリオネルに引きずられて私はそこまで連れてこられてしまう。
するとそれを見ていたスールが、
「なるほど、ルカはリオネルに弱いんだね。よしよし」
「不穏な気配がする。何てことだ」
私が小さく呟いているとそこでスールがリオネルに、
「私達の“衣装部”に入りませんか?」
「生憎部活には入る気があまりないんだ。今朝も勧誘されて大変だったから……」
「だったから?」
「ルカを落としたらいいぞって言って逃げた」
「それはそれは。でも、リオネルはルカと仲がいいですね」
そこでスールが、楽しそうに私に言う。
私が再び狙われている、そう思っているそのスールの隣で座っていたセレンが青い顔で、
「また私以外に被害者を増やすのですか。というか私もやめたいのですが」
「だめだよ~、というか、魔法使いなら、“衣装部”に入って、色々な服装の魔法的負荷や強化を研究すべきだと思う」
「で、でも」
「杖とか小物なんかも作ったりするし。原材料から仕入れるから安く作れたり、作ったものを売ればお小遣いになるよ」
「う、うう……お小遣いになるのはいいかも」
「それに、勉強とも重なる部分があるから、遊びで学べるからお得だよ」
「……」
そこでスールの言葉にセレンは完敗したようだった。
机にうつ伏してしまったセレンを見て再びスールは私達の方を見て、
「それでどう? お得だよ? 試験の過去問も手に入るよ」
そんな誘惑をしてくるスールだけれど、リオネルは頷かない。
リオネルがそこまで魅力を感じていないのだろう。
よかった、よかったと私が安堵している所で今度はスールがちらりと私の方を見て、
「可愛い服、いっぱいありますよ? どんな格好でもルカをできますよ」
「ルカが……」
「好きな服装ですよ。フリル付きのドレスから、何から、全部そろっていますよ」
リオネルがくるりと私の方を見た。
私は悲鳴を上げたい気持ちになった。
だって私に何かを訴えかけるようにリオネルが見ているのだから、つまり、
「い、嫌だから絶対に嫌だから」
そう私が抵抗した所で、教室に先生がやって来たのだった。
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